何だか随分と久し振りで、劇団四季の舞台を観たのです。
ここのところ、全然食指が動かなくて...。 で、キャスト。 ジーザス=芝 清道 ユダ=金森 勝 マリア=高木 美果 カヤパ=金本 和起 アンナス=吉賀陶馬ワイス シモン=本城 裕二 ペテロ=神永 東吾 ピラト=村 俊英 ヘロデ王=下村 尊則 司祭=佐藤 圭一 清水 大星 真田 司 といったところ。 この作品を観るのは2009年の4月、5月以来なので、3年半振りですね。 3年半振りの割に、上記キャスト、ほとんど変わりありませんでした。 大きく変わったのは言わずもがな、芝ジーザス。 あ、あと私が密かに大好きな(?)村さんのピラトと、復活!下村ヘロデ王くらいでしょうか。 以下、つらつら感じたことだけ走り書き。 今回、東京まで足を運んでこの作品を観たのは、もちろん芝さんのジーザスが目的。 昨年2011年の4月に芝さんがジーザス・デビューをして、それはぜひとも観たい!何が何でも観ねば!!と息巻いていたのに、結局地方へは巡回して来ず、東京のみで終わってしまった前回公演。 観逃しでした。 次にまた芝さん主演でこの作品が上演されるのなら、必ず見よう!と心に誓っていたところへ、某演出家の私情(私怨?)から急遽、今回の劇団60周年記念公演が決定されました。 理由は何であれ、上演されることは喜ばしい!ハレルヤ! というわけで、芝ジーザス観劇。 1年越し以上で積もりに積もった私の期待。 その期待していた芝ジーザスは、想像していたのとはかなり違っていました。 芝さん、おとなしい―――――...。 それが、私の感じた芝ジーザスの印象でした。 静かで、抑えめで、おとなしめ。 あぁ、そういうアプローチでジーザスという役に当たっていったのか...と思いました。 ただ、その分、芝さん自身の持ち味だとか、いいところが、殺されてしまっている?とも思い。 幕開けからずっと、"静かな若者"を演じている芝さんの姿にやたら違和感を感じながら(言ってしまいますが、まさにそれは"違和感"でした)、観続けていった後半で"ゲッセマネ"。 ここで、わかりました。 あぁ、芝さん、ゲッセマネにすべてをかけたのね?と。 実際、ゲッセマネに至るまでの、ユダに「(私を密告しに)行きなさい」と言う辺りから、やおら良くなったのです。 調子が出てきた感じだったのです。 それを感じて、やはりこの人はジーザスではなくてユダだな...というのも強く感じたことでした。 あと、これは言ってしまっていいものかどうか(と言いつつ、言ってしまうけれど)......芝さん、ジーザスとしてはヴィジュアルがつらいですね。 特にエルサレム・バージョンでは、ジャポネスクのような白塗りで顔を塗りつぶさないだけに、尚のことそれが...。 この日本演出の『JCS』、演出家自身が何度も語っているように「一人の美しい青年の苦悩」を描いたものなので、そして今までにジーザスを演じてきた俳優さんたちは、それに沿うような俳優さんばかりだったこともあって(いや、美しいかどうかはさておき、ともかく皆さん若かった)、芝ジーザスの立ち位置というものをどこに定めたらいいのか、一観客である私にはちょっと判じかねました。 十字架にかけられるラスト、S席の良席で観たせいか、今回は楔を打たれた手足から流れる血がとても生々しくて、民衆に裏切られた芝ジーザスが殊更に哀れで痛々しく映りました。私の目には。 で、ものすご~く久し振りに観た、王様・下村さん。 前に彼のヘロデ王を観たのは、もう15年くらい前だと思うのですが。 四季を出た後も、ちゃっかりゲスト出演出来ちゃう下村さんの渡世術を凄い!と思ったりしつつ... あのー、下さん...その中年太り、やばくないですか? なんなの、その多重あご?!! やばいでしょ、やばいでしょ!!! 太腿もぶっとくなっちゃって、スタイル丸崩れでした。 かつてはあんなにすらりとしていて、"ダンスの人"でもあった下さんが、あのようなお姿に...。 ヘロデ王の、あの透けそうなひらひら衣装を翻しながら、足を組み替えたり、高く足を振り上げたりなさっていましたが...そのスタイルで、おパンツ見せちゃ、駄目だと思います。 節制して、引き締まった体を取り戻してください、お願い... ; ; 村さんのピラトは非常~に良かったです! ピラトで観たのは初めてだったけれど、やー、やっぱり私、村さんのお声、好きだわ。 時折、ファントムになってしまいそうな潤みのある美声で、時々コブシが入ったり、唸ったり。 良いわ、良いわ~。 お年の割に、声がかなり若いのですよねー。 村さんがいたことで、今回のこのカンパニーに一味加わった感がありました。 高木マリアは相変わらず...声が浮いていて、音が安定しないのですよね。 ヴィヴラートも...。 日本語の発音も、やはり母国語ではない人の発音(子音がね)でしたし。 長年ずっと思い続けているのですが、なぜこの人がマリアを演り続けているのでしょう。 他にいないのでしょうか。 そして、アンサンブル。 前にも書いたけれど、この作品はアンサンブルが本当に重要なんです。 この作品の肝と言って間違いないです。 そのアンサンブルが、パワー不足でした。 舞台全面にポーン!と飛び出して来るような民衆のエナジーがないのです。 男性アンサンブルには深見正博さんが入っているし、女性アンサンブルには佐藤夏木さんが入っているし、明らかに今の四季では割と"本気キャスト"だと思うのですが―――。 そうそう、自由劇場は、オケの聞こえがあまりに"カラオケ"でした。 カラオケ過ぎるくらいにカラオケ。 この作品でカラオケを使わざるを得ない、というのはわかるのですが、自由劇場のスピーカーが悪いのでしょうか、べったりした、平面的な浅い音しか出ない、スピーカーでした。 だから、音にも厚みがなかった。 ロックなのに、重低音が腹の底にズンズン響いてくる感じはまるでありませんでした。 最後に。 ユダのスンラさん。 私、スンラさんのユダ、結構、嫌いじゃないのですが。 この日はなんだか、存在が薄くと言うか、軽くと言うか、そんな印象を受けました。 それは、もしかしたらユダとジーザスとの関係性やバランスからくるものなのかもしれず。 ジーザスが芝さんだと、スンラさんのユダとしてのいいところが、あまり活きない、引き立たないのかな...と。 ジーザスが捕縛されるシーンで、ユダがジーザスを抱き締めるのを見て、特にそう思いました。 芝さんとスンラさん、やっぱり相性が良くないのね?と思ったり。 スンラさん、前はジーザスに、あんなにもねっとりした濃厚な接吻をしていたのに、この日の芝ジーザスには、頬に触れたかどうなのかわからない程度のキスしかしていませんでした。 穿った観方かしら? 死後に復活して歌う、タイトルソングは楽しげに歌っていらっしゃいましたが...。 と、そんなわけで、全体的には幾分、物足りなさを感じた観劇でした。 芝さんのジーザスは、まさに60周年の記念として観た、といったところでしょうか。 Sun Matinee Nov.4 2012 自由劇場
by bongsenxanh
| 2012-11-07 01:23
| 観劇レビュ 国内etc.
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