食中毒でふらふらになった体に喝を入れるようにして、スーツケースを転がしながらブリュッセル南駅へ行った。
窓口で、友人宅への最寄駅の名前を告げ、そこへ行きたいのだと係員に伝えたら、「そんな町の名前はない」と言われる。 そんな筈はないと、手に持っていた自分が取ったメモを見せた。 "IETER" すると係員は、笑って 「あぁ、これはメモが間違っているよ。正しい名前は"IEPER"と言うんだ」 と言って、切符を発券してくれた。 友人に電話で地名を聞いた時に、PとTを聞き間違えたらしい。 IEPER(イーペル)はベルギー北西部の小さな町だ。 3年に一度開かれる"猫祭り"の時以外、観光客がこの町に溢れることはそんなにない。 第一次世界大戦中はものすごい激戦地になって、町の建物は軒並み破壊され、膨大な数の戦死者が出たのだそうだ。 今でもその時の兵士たちの集合墓地があり、イギリスの高校生は修学旅行でこの地を訪れることもあるのだとか。 その町へ向かうベルギー鉄道の路線に乗る外国人は稀であるらしい。 IEPERへ向かう電車に乗った私を、他のベルギー人たちは物珍しそうに眺め、切符を検札に来る車掌さんは、途中乗り換えをしなければいけない駅や、私が降りるべき駅が乗り換え後、幾つめになるのかを丁寧に教えてくれた。 更には、そばでそれを聞いていたおじいちゃんが、もう一度ゆっくりとした英語で私に繰り返し説明してくれた。 そして、車両の切り離しのために途中で乗り換えをした際には、重たいスーツケースを持って急斜の入り口ドアへのステップを登ろうとしていた私を見かねて、知らないおじちゃんがわざわざ車内から降りてきて、私のスーツケースを運び上げてくれた。 田舎へ向かう電車に乗っている地元の人たちは、首都ブリュッセルのベルギー人たちとは、親切の度合いが違っていた。 有難かった。 ブリュッセルからイーペルへは、乗り換え時間も含め、1時間45分~2時間程。 電車に揺られている間、一度も気分が悪くならなかったのは助かった。 イーペルに電車が到着して、スーツケースをどっこいせ、と持ち上げてホームへ下りると、そこには友人が、5歳の娘の手をつないで、もう片方の腕には1歳の赤ちゃんを抱きかかえて、にこにこしながら私を待っていてくれた。 ほっとした。 心の底からほっとした。 友人宅へは、このIEPERから更に車で30分以上走っただろうか。 フランス国境に近い、小さなのどかな村だった。 ご飯を食べていれば常に幸せそうな1歳2ヶ月のLeo。 赤ちゃんの笑顔って平和でいいなぁ。 食べることが人生最大の命題なんだ。 顔中、ヨーグルトでべちょべちょで、幸せそう。 実際、友人夫婦は「今の私達の一番のストレスは、この子の食欲」と言っていた。 下手すると、5歳のお姉ちゃんより、7歳のお兄ちゃんより、多くの量を食べていたりする。 1歳児の胃袋、どうなっているのだろう? こういう赤ちゃんや子どものいる"家庭"に入ったことが、病み上がりの私を落ち着かせた。 ここまで来れば、もう安心だ、と思えた。
by bongsenxanh
| 2013-01-31 00:30
| -Belgie Dec'12
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Comments(4)
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ともきち
at 2013-01-31 08:23
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嫉妬心というのが激希薄な私ですが(自分が持ってない本を持ってる人に嫉妬するくらいで)、そしてやり残したこともあまりないかなと思っている悟りを開いた昨今ですが。
いや、外人との間に子供を生みたくなった(真面目顔) 可愛すぎる・・・(悟りはまだまだだった) にしても ちょっとここに来て落ち着かれて良かったですねーーー 確かにホテルで天井にらめっこしてるより良かったかもーー。 臨場感溢れる旅行記に毎日わくわく同行しているような気分にさせていただいてありがとうーー
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oda
at 2013-01-31 16:44
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よかったです!!
しんどい時や海外に行って不安な時に親切にしてもらうと、ほんとに心に染み入る感じが致します。 その“猫祭り”なるもの一度テレビで観た事があります! 猫ちゃんも大好きな私は猫の大きな山車(←この表現であっているのかわかりませんが・・)やにゃんこちゃんのコスプレイヤーさん達をみて 「お~私も参加したい♪♪」と心で叫びました(笑) でも、3年に一度なのですね毎年開催されているのかと思っておりました。 それにそれに天使が写っておりまする~♫ あかちゃんの笑顔!!癒し~です!
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bongsenxanh at 2013-01-31 22:55
♪ともきちさん
あはははは>嫉妬心 産みたくなるでしょう?!そうでしょう?! 私も同じです(笑) 本当に可愛いんですよーーー、この子。 (そして上の2人もとっても可愛い。つくづく東西のハーフってお得だわ…) 去年の夏に会った時には、まだハイハイしていたのですが、その頃はもっと赤ちゃん赤ちゃんしていて、まるでミケランジェロかラファエロの絵の中の幼児のキリストか天使のようでしたよ~。 Leoという名前は友人の夫の希望で命名したそうなのですが、彼女は 「私は別の名前をつけたかったのにそれに出来なくて、それが本当に心残りで(上の2人も夫が名前をつけたので)、子どもに名前をつけるためだけに、それこそもう1人産みたい!!」 と言っていました(笑) 本当に友人が迎えに来てくれて、お家に滞在できて良かったです。 一時はどうなることかと思いました。 旅の気分を一緒に味わってくださっているのでしたら、私もとっても嬉しいです~^^
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bongsenxanh at 2013-01-31 23:01
♪odaさん
ご心配くださってありがとう~。 本当に馴れない異国で、心細い時に親切にしてもらうと、泣きたくなるほど嬉しいですよね~。 猫祭りは、そう、3年置きで、次は2015年5月10日の予定らしいです。 友人の夫に訊いたら、「まぁまぁだけど、地元の人も見に行く人と見に行かない人と両方。外国人観光客はなぜか日本人ばっかり来るよ」とのことでした。 日本人って、世界の中でも一番物見高い民族なのかもしれませんね(笑) 猫祭りのファイナルでは魔女が火で包まれて(昔の魔女狩りの再現ですね)、高い建物の上から、猫のぬいぐるみがいっぱい降ってくるのだそうです。 想像すると面白いですよねー。 この子、本当に天使みたいでしょう? ほとんど泣いたりぐずったりしない、いつもにこにこしていてご機嫌な、いい赤ちゃんなんです^^
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by bongsenxanh
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