指でつまんで、ぽりぽりと齧る。 まさにナイトキャップだ。 カカオの味わいと、中に詰められたガナッシュやクリームが相まって、美味しい。 午前0時をまわっていたのに、寝る直前だというのに、3つ4つつまんだ。よせ、わたし。 ベルギーは、まことチョコレートの美味しい国であった。 そして豊富な北海の魚介料理を始め、肉料理も、乳製品も、カプチーノも、本当に美味しかった。 もちろん、ビールも美味しかった。 友人には本当に良くしてもらったし、ベルギー人の友人の夫という「窓」を通して見えたものもたくさんあった。 壮麗な教会をいくつも見て、たくさんの美術品に触れることも出来た。 その一方で。 ベルギー人の、あるいは欧州人の、嫌な面を見たこともあった。 夜のGrand Placeで、クリスマス気分に浮かれて、ビールを飲んで酔っ払ったベルギー人(白人)たちから 「Chinese!Chinese!!」 と、大声で嘲笑するかのように叫びかけられたことがあった。 彼らは東洋人を見れば一様に、Chineseと呼ばわって嫌がらせをするらしい。 ブリュッセルの、夜の通りで、正面から歩いてきた男性数人連れに、ふざけ半分、からかい気味に抱きつかれそうになって、身をかわして逃げたこともあった。 アラブ系とアフリカ系のグループだった。 そう言えば、ブリュッセルに最初に到着した夜にホテルの場所を探していて、道を尋ねたヒンドゥー系の女性に 「ブリュッセルでは夜に道で男の人に道を訊いたりしちゃだめよ。 私みたいな、子どもを連れていたり、家族連れの女性にならいいの。 でも男の人には本当に注意して。 道を訊くのなら、お店に入って店員に訊くのが安全だから、そうしなさい」 とアドバイスされたことがあった。 それくらいに、夜のブリュッセルの治安は良くないということだ。 EUが成立して、通貨としてユーロが導入されてからというもの、ベルギーの治安は悪くなる一方だ、と友人の夫は言っていた。 東側からの移民の増加と、更にアラブ・イスラム系移民の増加に伴って、様々な面で社会にひずみが出来ているのだそうだ。 報道や社会統計によると、ベルギーは50年後にはイスラム圏になっているのではないか、とまで言われているらしい。 帰国する当日、空港でもまた、ベルギー人の中年男性二人連れ(白人)に嫌な思いをさせられた。 スーツケースを持って、エスカレーターに列を作って乗っているところへ、わざわざ無理やり割り込んで来たのだ。私の目の前に。 そして、「ヘッロ~~!! Are you Chinese? ニーハ!ニーハ!」と言う。 どう見ても、親しみで声をかけてきているのではない。 旅の最後に嫌な思いをするのも避けたい、と思いつつ、ニーハじゃねえよ!といらっとして、 「I'm NOT Chinese!!!」 とだけ言って、後は無視しておこうとした。 すると彼らは「それじゃ、North Koreanか?ピョンヤンへ帰るのか?ハハハ!」と言い募る。 他にも何か、つべこべ言われた。 たいがい、いらいら度がピークに達したので(本当は放っておけばいいのだけど) 「私は日本人よ、何か文句ある? 私はこの国は初めてだったけれど、欧州人の男がどれだけ東洋人女性に対して無礼者だったか覚えておいてやる! そして、いい? 日本人女性はあなたたちみたいな無礼な男は大嫌いだから! 見てなさい、この ≒※●@×〆!!!」 と、早口でまくしたてた。 最後に何を言ったかは、もはや記憶にない。 いや、だからこういう場合、無視しておくのが最善なのはわかっているのだけど。 でもね、あまりに失礼で、差別意識と悪意に満ち満ちていてね。腹が立ったものだから。 一応、周囲にたくさん人がいて、セキュリティも働いている空港だということも認識した上で。 彼らを最上級のf-wordで罵るために、一念発起してフランス語を勉強しようか、と思った程、嫌~な気分にさせられた。 どうして、旅の最後でわざわざ、外国人旅行客に嫌な思いをさせるかなぁ。 彼らはなんと、私と同便で日本まで行く(どうやら出稼ぎに行くらしい)ベルギー人で、乗り継ぎのヘルシンキ空港でも、他の日本人の若い女の子に声をかけまくっていた。 わかっている。 結局こういう低俗な嫌がらせをしたり、人種差別意識が強いのは、non-intelligentの、モラルと民度の低い人々なのだ。 すべての人たちがこうだというわけではない。 その証拠に、鉄道で私のスーツケースを荷上げしてくれたベルギー人のおじさんや、レストランで話し相手になってくれたフランス人男性や、夜のGrand Placeで一緒にATMまで歩いてくれた親切なベルギー人カップルもいたではないか。 それでも。 何も旅の最後の最後の空港で、こんな気持ちを味わわせることはないではないか、神様!と思わず天を仰がずにはいられなかった。 NYでは、ここまであからさまに嫌がらせをされたことは、なかったのにな。 やっぱり人種の流入具合が全然違うんだろうな。 あとは、旧文化がそのまま残っている古い土地と、移住した先の新大陸との体質の違いなのかな。 などと、苦い思いと頭で、異文化についてぼんやりうつろに考えた。 ブリュッセルからヘルシンキへ向かう飛行機の中で、隣の席に乗り合わせた若いインド人女性は、ヴェジタリアンだが、ヴェジ・ミールをリクエストしていなかった様子で、機内食を食べずにスナックをつまんで我慢していた。 搭乗してしばらくしてから、私に遠慮がちに、「もしかして日本人?」と声をかけてきた。 彼女はこれから日本へ行って勉強して、それから働くのだと言い、私に 「日本のことはとても尊敬しているわ。 日本のworking cultureは本当に素晴らしいと思う。 それに日本人女性は本当にきれいね。特にお肌がとてもきれい」 と言ってくれた。 いろんな国の人がいる。 いろんな考えや意識の人がいる。 いい人もいれば、嫌な人もいる。 嫌な出会いもあるけれど、素敵な出会いもある。 全部ひっくるめて、それがまた旅だ。 飛行機の下には、スカンディナビアの海と入り組んだ土地が見えていた。
by bongsenxanh
| 2013-04-23 01:13
| -Belgie Dec'12
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Comments(5)
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ともきち
at 2013-05-05 08:27
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遅くなっちゃったんだけど
この記事をしばらく頭の中でこなしておりまして^^ すごくすごくわかります。 これはもうあからさまに相手が言ったことで そしてその相手がバカモンなんでしょうが(どの国にもいるバカモン)、 確実にあるね、そして強いね、特にアジア圏への偏見は。 もうそこここに横柄であり(これが全員じゃなくて確実に私達に向けて横柄) 英語がわからないと思っての悪口(美術館にこの人たちが来てわかるのか、みたいな。聞こえてるよ!!と何度言おうと思ったか・・) また、残念ながら向こうの方々より体格も小さく背が小さいので、パブとかバルとかそういうところで並んだ時に(並ぶって言うかぐちゃぐちゃでしょ、並び方もほぼ)後ろから来た人に飛ばされたこと、 もう数限りなくありました。
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ともきち
at 2013-05-05 08:36
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でもふえさんの時と一緒で、その一方で、
並んでいる時店の人に無視されて飛ばされたら、後ろの人が「ここにいるからこの人達を先にして!」と言ってくれたり、 私が橋のたもとで一瞬オットを見失って迷子になって(おい)呆然としていた時に、ものすごく忙しそうに歩き去ったOLっぽい地元の人がわざわざ戻ってきてくれて、話を聞いてくれてどこに行けば会えるかというを教えてくれたり(一方通行の所なので出口があったのです)。 だから私の感覚では半々なんだわ。 嫌なこともあるけど、それを補う素晴らしいこともある、みたいな。 でなければ旅に行かないよね^^ それがふえさんのこの記事の最後の6行に集約されていると思いました。 (あと・・・ 一部を除いて、経済的にも貧しいんだ、と思う。 どの国も歴史はあるし過去の栄光はあるけれど、スリはあり、誘拐はあり(日本では考えられない)、一緒になったベルギー人の人も実際に国を離れて出稼ぎなのだから、別のところで稼ぐ、なんだよね。 日本から来た人はさぞかしのほほんに見えるだろうなあ・・・と。)
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bongsenxanh at 2013-05-06 00:22
♪ともきちさん
そんなきちんと読んで、そして考えて、コメントくださって、どうもありがとうございます; ; このトピックを書く前に少し考えたのです、書こうか書くまいかと。 読んで楽しい内容でもないし、不愉快になるようなものなら、書いて残さない方がいいかなーとも思ったりして。 でもやはり、こういう嫌な思いをしたことも旅の一部だなと思って、自分用記録に書いたのですが。 それを誰かに読んで頂けて、一緒に何か感じて頂けるってすごく幸せで本当に有難いです^^ アジア人に対する蔑視って、本当にあるんだなーとしみじみ感じました。 ともきちさんが書かれているように、確実に自分に向けて、ピンポイントで、それも薄々察する程度のさりげないものでなく、はっきり言葉に出して嫌がらせをされるって、こんなにも腹が立つものかと思う程、腹立たしかったです。 それと同時に悲しく、虚しくなると言うか。 こんな下等な行為を普通にする人たちって存在するんだなー、と呆れたりもして。
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bongsenxanh at 2013-05-06 00:23
友人が結婚してまだベルギーに渡ったばかりで、オランダ語もほとんどわからなかった頃に、スーパーなどに買い物に行くと、ただすれ違っただけの人にも酷い言葉を吐き捨てられたりして、お姑さん(友人のベルギー人の夫のお母さん)はとても胸を痛められていたそうです。
同じベルギー人としてやりきれない、と。 同時に、友人のお母さん(もちろん日本人)は「とんでもない国へ娘を嫁がせてしまった」と、やはり胸を痛めていたそうです。 アジア人がヨーロッパへ移住するって、旅行者には計り知れない苦労がありますね。 一方で、ともきちさんのおっしゃる通り、本当に半々で、いい人もまたそれと同じくらいいるのですよね。 親切にしてくれる人も、助けてくれる人も、いて。 それは海外に行かなくても日本国内でも同じですものね。 日本人全員が善意のいい人ばかりということは決してないですし。 だから、どこの国でも一緒なんですよね。 (ただ、公共マナーがこれだけ良くて、見知らぬ人にも親切な人が多いのは、やはり日本だと思いますけど!落とした財布が中身も抜かれずに返って来る国なんて、日本くらいだと思います)
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bongsenxanh at 2013-05-06 00:23
嫌なことばかりだったら、二度と旅になんて出ないでしょうから、やっぱりいいことや素敵なことがたくさんあるから、行くのですよね。
あと、海外に出ると日本の良さ、っていうのも再認識できますよね。 なんだかんだ言っても、やっぱり日本が好きですし^^ 他の国と日本との「違い」を肌で感じられるのも醍醐味なのかなぁ。 その違いを、お互い認め合って、違って当然、違っているからそれぞれがいいって思えたら最高なんですけどねー。 コメント欄の字数制限に引っかかって3つに分かれてしまいました。 長くなってしまってすみません~。
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by bongsenxanh
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