最初にお断わりしておきますと、私、バズ・ラーマン監督の作る作品が苦手です。 もともと苦手です。 『ロミ+ジュリ』も『ムーラン・ルージュ』も合いませんでした。 あ、『オーストラリア』もだ。 そんな中にあって、この作品は、かなり良い感触でした。 ラーマン監督は、模型の様な、おもちゃの様な、虚構の世界を作り上げるのが天才的に上手いですね。 そう、その"虚構"というのが、この作品の世界観にはまさにぴったりフィットしていて。 もう決して戻らない、手に入らない、過去を、幻を、追い求める男ギャツビー。 そして彼が繰り広げる狂瀾の成金世界はそれこそ"虚構"としか呼び様のないもので。 それは1920年代のアメリカ合衆国―とりわけNY―と重なって見える。 奔放で無責任な。 で、そのギャツビーを演じるレオナルド・ディカプリオですが...想像していたのよりは良かったです。 映画の中で何度か、嘆息させられるような表情を見せているところがありました。 が、やはり彼は"小さい"のですよねー。 見た目の小ささだけでなく。 このギャツビーという役に対して、彼の方が役不足だったかなぁ...という気がしました(レオファンの方々、申し訳ありませぬ)。 「素敵~~!!!」って、うっとりしちゃう感じは全然なくて。 ロバート・レッドフォードのギャツビーは眩いばかりに美しかったけどなぁ。 レオ、あともう5、6年若い時にこの役をやれたら良かったのかもしれない。 でも今現在でも"大人の男性の余裕のある感じ"は出ていなかったので、もっと若い時だったらもっと役としては辛いかもしれないし。 どうにも"小っちゃさ"が目立ってしまって、難しいところでした。 トビー・マグワイアはとっても良かったな。 トビー、大好き。 いえ、もちろん日和見でなく、"ギャツビー"という男の目撃者であり語り手であるニックという役が、彼の良いところとうまくマッチする役だったのだと思います。 表情がとても生きていて良かった。 デイジー役の女優さん、無垢で、世間知らずゆえに無邪気で、頼りない感じが出ていたのは良かった。 この役によくはまる女優さんだったと思います、ちょっと幼い感じはしたけれど。 ただ、私はデイジーみたいな女が大嫌いなので(いや、ああいう女が好きだという女性はいないと思う)、好演されればされるほど、なんだかなぁ...という感じでした。 あと、最高に嫌な奴、デイジーの夫。 この役者さん、どこかで見た顔なのだけど...どの作品で見たのか思い出せない。 いずれにせよ、他の作品でも嫌な奴の役だったような気がしますが。 間違ってもナイス・ガイにはならない顔なんですよね。 私がバズ・ラーマン監督作品を「合わない」と思うのは、彼の作り出す映像の色彩感覚と音感覚が、私とはまったく相容れないものだからだということに、今日観ていて、初めて気づきました。 よく"スピード感がある"と形容される彼の演出やカメラワークも、どうにも私の肌には合わないのです。 これはもう本当に生理的なものと、好みとによると思うので、好きな人はたまらなく好きなんだろうなぁ、とも思います。 あ、でも、ガーシュウィンの『ラプソディ・イン・ブルー』を使っていた選曲はとても良かったな。 彼の音楽は、当然と言おうか、あの時代のアメリカと非常によく融け合いますね。 あれこれ言いながらも、2時間半強もの長さの作品を、まったくその長さを感じさせず、むしろ短く感じさせてぐいぐい引っ張っていくものに仕上げた彼の手腕にはお見事!と思わされたのでした。 最後に寂しさや虚しさが残る作品だと思うのですが、そこにトビーの口を借りたナレーションで、ギャツビーの生き方に対する称賛や希望を込めた〆にしていたところも好感が持てました。
by bongsenxanh
| 2013-06-28 00:46
| 映画
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Comments(4)
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ともきち
at 2013-06-28 16:45
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あのーーー
デイジーの夫は、・・・と書こうとして(きっとふえさんのそれとは違って、私のは卑俗) あまりにあまりの似てる人なので別の所に書きます・・・ わかる。 カメラワークが俯瞰とかぐりぐり回りとか あと色合いがあれだし、 更にまさに書かれている音の使い方、 そして私はそれが大好きなので、もっとやれやれ!!と言う方(爆 ここがきっとバズファンとそうじゃない人の違いかなあーとふえさんの感想を見ていて思ったわ、好みなんですが、ここは全く。 私が話として解せないのは、デイジーなんです。 もう原作でも解せない解せない・・・とずうっと唸ってます、要は私も嫌いなんですね・・・・・嫌いって言うかわからない。ぷ。 私の友人は、このレオでぶっ倒れたらしいので(素敵過ぎて)、だからここも感じ方なんだろうなあーと思いました。あの笑みに痺れたと(多分この写真の笑みです) トビーはいいわよね、うんうん!
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bongsenxanh at 2013-06-29 00:38
デイジーの夫について、了解です(笑)
そうそう、バズ作品のファンかそうでないかって、本当にもう"好み"なんですよね。 良し悪しの問題ではなく。 ただ、『ロミ+ジュリ』を最初に見た時は「何これ?もしかしてシェイクスピアを茶化してるの?」って思ったくらい、全然受けつけなかったので・・・感性に合うかどうかって、大きいですね~。 デイジーの夫がトビーを、愛人が使うアパートに連れて行くシーンがありましたよね。 あのシーンの、赤基調の色彩なんて、本当に私には受け入れ難いものでした。 ものすごく不快で(^^;) でもあの不快感も、監督の計算通りなのかもしれないですし。 だとすれば、やり手ですよねー。 あと、ラストの方の事故シーンのカメラワークとか、人の吹っ飛び方が不自然な様とか、やっぱり苦手だなぁ・・・って思ったところでした。 すごくアメリカン・カートゥーン的なカメラワークを多用するんですよね、ラーマン監督。
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bongsenxanh at 2013-06-29 00:39
長過ぎて切られました。
デイジーは、解せないですよね。 あれって、フィッツジェラルドの実際の妻ゼルダがかなりモデルになっていますよね。 良家のお嬢さん育ちで、パーティ好き、派手好きのゼルダ。 だからフィッツジェラルドが女性に夢を抱いた部分が投影されているのかなぁ、と。 そして男性側から見た理想の女性像と、実際の移り気で酷薄な女性との間のギャップみたいなものも描きたかったのかなぁ、とも思ったりするのです。 デイジーには、キャリーに決まる前に、キーラやスカーレットやナタリー・ポートマンが候補として挙がっていたみたいですね。 そんな気の強そうな、もう人気とイメージが確立されちゃってる女優陣より、まだ色のついていないキャリーで正解だったと思います。 どうもオーディション後にレオが「キャリーがいい」って言ったらしいです。
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bongsenxanh at 2013-06-29 00:40
更に。
このグラスを掲げているレオの笑顔でなくて、その前の、初めてトビーが振り返ったレオの顔を見た瞬間の、レオの笑顔は、私もちょっとだけくらっとしかけました(笑) ばんばん花火が上がっているのをバックに、こちらも思いっきりの作り笑顔ではありましたが。 ともきちさんのご友人のようにぶっ倒れる人がたくさんいたら、レオ様も役者冥利に尽きるでしょう。 ラーマン監督もレオを起用して良かった!ってほくそ笑んでいることでしょう(笑) 私は断然、トビーでした。 ともきちさんのおっしゃっていた、「きょとん」とした、あの大きな瞳を見開いた表情、本当によく生きていましたよね~! しかし、「合わない」って言いつつ、これだけ語らされるということは、やはりバズ・マジックにかかっているのでしょうか・・・
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by bongsenxanh
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