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『花野に眠る』 森谷 明子 著、東京創元社
花野に眠る (秋葉図書館の四季)

こちらを読みました。
森谷明子さんの、『れんげ野原のまんなかで』の続編にあたるお話。
えーと、私が『れんげ野原~』を読んだのが...2005年4月なので、おぉ、何と10年も前のことではありませんか。
筆者自身もあとがきで書いていましたが、続編としては時間が経ち過ぎているのですが、10年前からすぐ続く続編なだけに、時代設定はもう10年程前、もしかしたらもっとそれ以上に前かもしれない、"同時代性"には堪え得ない――「現代の世相を鋭く切り取って」はいない作品、となっています。
ただ、筆者の描きたかったものは、そういったものではないのでしょう。
それこそ、子どもの頃の図書館を思い出させるような、"平成"ではなく"昭和"の図書館を彷彿とさせるような、温かく懐かしいような雰囲気の作品になっています。
いや、懐かしい以上に、これは世知辛い現代には存在し得ない"おとぎ話"を描いたものなのかもしれません。
今回も図書館にひょんなことから舞い込んだ"ご近所の謎"を解くミステリ仕立てになっていますが、前作よりも今作の方がミステリとしてはちょっと弱い気もします。
様々な事象や証拠が提示されないまま、謎解き役の新米司書・文子と先輩司書・能勢の推理ばかりが先行する、ちょっとご都合主義的とも取れるような展開。
ただ、本格ミステリだ!と構えずに、「ほっこりした田舎の図書館を舞台としたお話だな」と思いながら展開を楽しみながら読めば、面白さは十分味わえるか、と。
春の気配が漂ってきた今時期にはちょうど良い作品。
by bongsenxanh | 2015-03-05 23:51 | | Comments(2)
Commented by tomotomo1202 at 2015-03-06 08:17
この話、一種のファンタジーだよね・・・図書館自体がぽつっと建っていてそれはそれはなんだかファンタジーのにおいが・・・。テーマ的にも場所も(笑)話も嫌いじゃないんだけども。
日常の謎を解く単純なミステリであって欲しかったなあと思いました、私はね。そのあたりはすごく好き。
白骨死体が出てくるあたりから、なんだかなあー私の勝手に想像した方向と違うなあーと思いつつ読んでいました。
にしても前作がそんなに前とは!そこに一番驚いたわ!!
Commented by bongsenxanh at 2015-03-07 00:36
♪ともきちさん

そう、まさにファンタジーなんですよね。
私が"おとぎ話"と書いたのも、そういう意味合いで。
現実的ではないけれど、でもどこかにこんな図書館があったらいいな…と、本読みさんなら夢見るような、そんな図書館がある世界。
で、そうそう!そうなんです!私も白骨死体の辺りから
「あれー?私が読みたかった秋葉図書館の世界は、そっちの方向じゃないんだけどなぁ…?」
と思えて仕方ありませんでした。
そこまで入り込んでいたのに、すぅっと温度が下がってしまったような感じで。
日常の小さな、あれっ?と思う様な謎解きで良かったんですよねぇ。
結局最後まで正体が明かされなかった、二話目で出て来たキャラブキを煮ていた吉井夫人の「家庭の味」を楽しみにしている「お相手」が誰だったのかが、とっても気になっております(笑)


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