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『Brooklyn』
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シアーシャ・ローナン(Saoirse Ronan)の、こちらの映画を観て来たのです。
(余談ですが、日本ではシアーシャと表記されるけれど、本来の発音だと「サーシャ」なのですよね)
日本公開が決まって、映画館で予告が流れるようになった頃から必ず観ようと思っていたのですが、なかなか観に行く時間が取れず、公開終了間近になってようやく観られました。
『つぐない』でのスクリーン・デビューから、シアーシャのことはずっと観て来ている気がするのですが、彼女は"自分がやるべき作品"をきちんと選んで、そして"自分が演じるべき役"をきちんと演じている感じがしますね。

で、ここに上げた、この映画のポスターやフライヤーで使われているこの画像、観に行く前までは、ただ普通に彼女がブルックリンのとある街角の塀の前に立っているだけの風景だと思っていたのですが。
この映画を最後まで観終わってみると、ただの風景に見えていたこの彼女の姿に、とても深い意味があったのだということに気づきます。
それは映画を観た方のみのお楽しみということで。

お話は、第2次大戦後の不況にあえぐアイルランドの片田舎から、仕事と新しい人生を求めて米国はブルックリン(NYでもマンハッタンではないところがポイント)に渡ってきた内気で不器用な女の子・エイリシュが主人公。
彼女が、全く土地勘もなく、知人も友人もいないブルックリンで、ホームシックに苦しみ、慣れない高級デパートの売り子の仕事に戸惑いながらも、自分の居場所と自分の生き方、更には"新しい自分"へと成長していく様がじわじわと胸に迫ってくる。
決して派手な出来事もものすごくドラマティックな展開もないけれど(むしろ、どちらかと言えば地味な映画だと思う)、シアーシャの瑞々しい演技と感性がひたひたとこちらに伝わってくる。

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見ず知らずの地、ブルックリンでエイリシュが出会ったイタリア移民の男の子トニーを演じるのがエモリー・コーエン(Emory Cohen)。
この映画で初めて彼のことを知ったのですが、最初に登場した時にはそんなに格好良く見えなかった彼が、話が進むに連れてどんどん素敵に見えてくるのが、とても良かった。
最初はちょっと軽薄そうに見えたトニーが(だって、何てったってイタリア男ですもの)、なかなか恋愛モードにならない実直なアイリッシュ・ガールのエイリシュに一途に思いを寄せる様子が、何て言うのか、ものすごく胸キュン(死語)なのですよ!
イタリア移民で、配管工をしていて、「自分は冴えない」と自覚しているトニーが、なりふり構わず必死でエイリシュに思いを捧げる姿がもう、健気で健気で。

そのエイリシュが、自分を米国へと送り出してくれた最愛の姉を失い、一人残された母親を慰めるためにアイルランドへ一時帰国し、そしてその地でまた良家の子息ジム・ファレル(ドーナル・グリーソン/Domhnall Gleeson)と良い雰囲気になった時に、自ら下す決断とは…。
そして自分がこれから生きる地として、米国・ブルックリンを選ぶのか、生まれ故郷のアイルランドを選ぶのか…。

そうそう、上記のジム・ファレルを演じていたドーナルは、『ハリー・ポッター』シリーズのロンのお兄ちゃんのビル・ウィーズリーなんですよね。
で、更にこの映画にはウィーズリー夫人のジュリー・ウォルターズ(Julie Walters)も出演していて。
二人が一緒に登場するシーンはなかったものの、ウィーズリー家のママと息子が共演って、ちょっと面白いですね。
他にエイリシュのお姉さん役のフィオナ・グラスコット(Fiona Glascott)も良かった。
アイルランドがひとつの舞台になっていることもあって、アイリッシュの俳優さんの出演が多かったですね。
シアーシャにしても、ドーナルにしても。
だから、アイリッシュ訛りの英語が自然だったのね(当たり前か)。

原作者は男性なのですが、主人公が女性ということもあって、女性により訴えるものの強い作品だと思います。
私のお隣で観ていた男性は、途中結構眠っていらっしゃった…もったいない。
自分の大切な文机の抽斗にでも、そっと大切にしまっておきたいような作品。
by bongsenxanh | 2016-08-19 01:15 | 映画 | Comments(0)


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