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『オペラ座の怪人』―横浜まで行ったのよ、変更点あり、なレビュ
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書く書く、言っておいてなかなか書けずにすみません。
『オペラ座の怪人』&「横浜」で検索して来て下さる方も多い様なのでもうそろそろ書いておかないと…
(あ!そう言えばNYに行く直前に『ノートルダムの鐘』も観たのに、そちらも全然書いてなかった!)
というわけで、ひとまずキャストボード。
こんなキャストでした。

ファントム=佐野 正幸  クリスティーヌ=苫田 亜沙子  ラウル=神永 東吾

ですね。
何としてでも涼太ラウルに今ひと目…という一心で取ったチケットでしたが、ま、そういう希望はたいがい裏切られるのが劇団四季のセオリーです。
横浜でラウル・デビューを果たした神永くんのラウルを観られるのもまた一興ということで。
涼太ラウルはね、きっとまたいつかどこかで、会える。たぶん。(と思いたい)
ファントムとクリスティーヌは希望通りと言えば希望通りです。



さて。
書かねば!と思って書き出した割に、涼太ラウルにお目もじ叶わなかったせいか、今一つ書くべきことが浮かんで来ないと言うか、やけに冷静で醒めている感じなのですが。

今回、初の横浜KAATでの公演ということで、席位置もよくわからず予約した久々のS席は、サイドブロックながらも前方から4列目という超舞台間近席で、いつもの定位置C席(2階席後方)から観るのとはかなり役者さんの表情や演技の近さ加減が違いました。
当たり前ですね。
やはり高いお値段払うだけのことはあります。

ただ。
まず冒頭で言いたいのは、この日の"Angel of Music"から"The Phantom of the Opera"での、ファントムがクリスティーヌを地下へと連れ去るシーンで、かなり大きな失敗があった件。
ここ、初めてこの作品を観る方も、もう何度もこの作品を観ている方も、やはり一つのハイライトであり、スペクタクルに魅了される重要なシーンであるはずです。
ナンバーだってタイトル・チューンである"The Phantom of the Opera"ですから、この作品を代表する、この作品の顔とも呼べる音楽であり場面であるはずなのです。
が、この日、この公演で、湖面を表すゆらゆら揺れるろうそくが灯りませんでした。
この作品をご存知の方はおわかりだと思いますが、発光ダイオードでちらちら揺れるろうそくの炎を表現している無数のろうそくのセットが舞台下からせり上がって来て、そこへクリスティーヌを乗せたボートをファントムが漕いで舞台上手から中央へと湖面を渡って移動して来ますよね。
で、♪ゆ~め~に ひ~びく~~ うーたーごえ~~~!と、ファントムの絶対的な支配力と畏怖と甘美さを漂わせる歌声が被って来て、クリスティーヌだけでなく観客をも湖底にあるファントムの秘密の棲家へと誘っていくわけなのです。
だから、このシーンは、とりわけ重要で何があっても失敗なんぞあってはならないのです。
が。
この日は、その重要なシーンでろうそくが灯らず、わけのわからない白いにょきにょきした棒がいっぱい舞台から生えて来ただけだった。
スモークもあまりきちんと発生しなかった。
当然、ボートはつーーー…と流れ出て登場して来るけれど、湖面を漕いでいるという雰囲気はゼロ。
幻想的な雰囲気もゼロ。
皆無です。
初めて観たお客さんには???という場面でしかなかったはず。
もう何回観たかわからない私も???でした。
過去にこの場面でこんなこと起こったことなかったわ。
で、あまりにも場面の雰囲気ぶち壊し、舞台も台無しだったので、幕後のカーテンコールでお詫びなり何なりあるのかと思いきや、それも何もなし。
何となく腑に落ちない気持ちだったので、終演後にそこらにいた劇団四季のスタッフに「あの場面が…」と事と次第を伝えて、そういう際の対応を伺ったところ、「そんなことがあったんですか?新しい劇場で、舞台機構のトラブルはありまして~」という一言だけ。
なんじゃ、そら?
あんな肝となる場面で、見せるべきものを見せられなくて、お客さんの機会損失しても、それだけかい?
金返せ、とは言わないけれど(いや、本当は言いたい気分だけれど)、もう少し誠実な対応ってないものかしら。
殿様商売だから(劇団四季様ですものね)、所詮そんなものなのかしら。
かなり残念、な出来事でした。
四季の舞台装置のスタッフさん、劇場での客対応のスタッフさん、ゆるくなってるんでしょうかね。

で、ファントムの佐野さんは、まぁ、いつも通りの佐野さんでした。
いや、なまじこれの前週にBWでJemes Barbour(ジェイムズ・バーバー)のファントムを観て来たところだっただけに、今一つ感じるものが薄かったと言うか、当然と言えば当然なのだけど、ばーばーの圧倒的な歌唱力と存在感には敵うわけもなく…ごにょごにょごにょ。
いえ、佐野さんは佐野さんで、安定しているのですよ。はい。
ただ、名古屋の時からそうだったけれど、佐野ファントム、"The Music of the Night"の高音♪こころーは 空に高くーーー「くーーー」とか、♪夜の調べの中にーーー「にーーー」とか、もう端っから出すの諦めちゃってて(声域的に出ないのでしょうね)、息を抜いて"あたかも出たように"歌って誤魔化しているのが、残念と言えば残念でした。
でもこれももう、何度も聴いて慣れちゃったけど。
本当は慣れちゃいけないんだろうけど。

苫田ちちクリスも健在。
佐野ファントムが相手だとさぞかしこってりするかと思いきや、意外に普通でした(何がじゃ?)
で、今回の横浜公演から、四季ではクリスティーヌの"Think of me"のキーを上げて来ています。
もともと、WE(ロンドン)やBW(NY)では、"Think of me"のキーが日本の四季版よりずっと高いのです。
どういうことか、日本語版歌詞で説明すると。
初め、クリスティーヌが急遽カルロッタの代役を申し付けられて、自信ない…いやいや…って感じで
♪どぉぞ…思い出~を、こーのむーねーに…
って歌い出しますね。
日本語版のクリスティーヌが自信無さ気なのはここまでで、この後、やけに溌剌とした感じで
♪二人はー別れを~ 告ーげーるけ~れ~ど~ 忘れーないでいてねー 過ぎし日ーのーあーいを~
 いつか あなたーの 胸ーにー よーみーがーえーる~

はい、ここまで歌ったところで、場面はリハーサルから本番の舞台へ転換し、クリスティーヌの衣装も奴隷から妃(?)へと早変わりして、
♪この世のー 愛ははかなーく 夢か まーぼーろーしかー
って歌うのですが、ここのリハーサルから本番への転換で、WEやBWでは転調して一気にキーが高くなる(上がる)のです。
キーで言うと短三度。
長三度に比べれば幅は狭いですが、でもこれ、人間が生声で歌う際で考えると、かなりな高さの違いです。
それだけキーが上がった方がリハーサルから本番への転換が劇的になるわけです。
また、クリスティーヌのソプラノ歌手としての声の美しさも際立って効果的なわけです。
が、日本の四季版では初演以来ずっとここでのキー上げ(転調)をしていなかった。
なぜか?
理由は明らかにされていませんが、私が推測するに(邪推です)、初演からクリスティーヌを演じていた四季のヒロイン(女帝とも呼ぶ)=野村玲子さんが、ここでキーを上げるのが苦しかった。
ここでキーを上げると、その後のフレーズや最後のカデンツァなどは更に恐ろしくキーが高くなるので、声楽科出身ではない彼女の手には負えなかった。
というのが、実のところではないかと思います(注:あくまでも私の推測ですからねー)
実際、初演版のCD(既に廃盤となっておりまして、入手困難です)を聴くと、"Think of me"を歌う玲子さんの声はかなり低い。
クリスティーヌとは思えないくらい低い。
私の推測、当たらずとも遠からずではないかと思います。
で、その初演版以来のクリスティーヌのキー、野村玲子さん以外に四季で代々クリスティーヌを演じて来た声楽科卒ソプラノさん達にとっては、ものすごく低いのです。
当然、歌いにくいのです。
だから、今回のこの横浜公演になってようやく四季が重い腰を上げてキーを上げたのは、まぁ英断と言えるのではないかと思います。遅過ぎる英断ですが。
というわけで、この日のクリスティーヌ、苫田さんも、それはそれは歌いやすそうに気持ちよくばんばん高音で歌っていました、"Think of me"
聴いていて気持ち良かったです。
とても伸びやかな歌声で、歌姫クリスティーヌという役とも相俟って、ソプラノさんの本領発揮!という感じでした。

さて、キー上げの話ついでに、横浜公演からのもう一つの大きな変更点。
2幕の墓場のシーンでの三重唱について書いておきます。
以前にも名古屋公演の前楽のレビュでも書いたことがあるのですが、こちらもWEやBWと同じファントム×クリスティーヌ×ラウルの三重唱パターンに変えて来ました。
墓場でクリスティーヌが"Wishing You Were Somehow Here Again"を歌い終わった後の"Wandering Child"(ファントムが♪こーこへ お~いでー ぅわたしーの~ いぃ~としーい~ クリスティーヌ…って歌うあれね。誑かしの歌ね)、四季では従来、ファントムとクリスティーヌの二重唱で歌われてきました。
クライマックスの
♪ここへおいで クリスティ~ヌ 私のもとへー(ファントム)
♪ふーるーえーているのーよー(クリスティーヌ)
♪そのこーこーろ~~~!(二人)
 エェ~ンジェル オブ ミュ~ジック
 も~いち~ど~ ふた~りは とーもーに~~~!

のデュエットでのフレーズが、私は大好きだったのです。
ところがこれ、WEではだいぶ以前から、BWでも3年程前から(多分。Howardファントムだった頃はやっていなかったと思う。Norm Lewisがファントムをやった頃から採用して、ばーばーファントムでは定番としてやっている)二重唱ではなく三重唱で歌われるようになっています。
途中からラウルが上手から登場してきて、デュエットに割って入るのですね。
四季ではそれを採用しておらず、二重唱の方が好きだった私は「よしよし」と思っていたのですが。
ただ、名古屋公演では最初の頃、"お試し"で少しの期間だけ三重唱で歌っていた頃がありました。
私は確か、芝ファントム×山本紗衣クリスティーヌ×涼太ラウルの組み合わせで三重唱を聴いた記憶があるのですが。
その後、名古屋公演ではまた二重唱に戻していたので、「あれ?フィット感悪かったのかしら?なんにせよ二重唱万歳!」と思って、また「よしよし」と思っていたのですが。
今回の横浜公演で、四季は"日本初!三重唱!"とちゃっかり鳴り物入りで宣伝して、二重唱を捨てて三重唱にしてしまいました。
残念無念。
と言うか、日本初じゃないじゃん。名古屋でもちらっとやってたじゃん。(と、愛知弁で突っ込んでみる)
もっと言うと、大阪かどこかでもちらっとお試ししていたという噂を聞いたことがあるわよ。
ま、ともあれ、そういうことです。
四季版では、墓標(?)の方にいるファントムの方へクリスティーヌが手を差し伸べて歩み寄っていくのに合わせてラウルが
♪彼女はゆくー
 彼のもとへーー
 信じられないーーー

みたいな歌詞で、割って入っていました。
ラウル入って来なくていいのになぁ。

そう、そのラウルです。
神永ラウル(個人的にはドンヨン・ラウルと呼んでいる。本名だから)の印象。
何か、新しいラウルです。
四季には今までいなかったタイプのラウル。
だから、新鮮です。
やはり国民性が出るのか、クリスティーヌの肩を抱いたり、背中に手を当てたり、腰を抱いたりする時が「がしっ!」て感じで、すごく韓国男子的男らしさでした。
何か、力業で頼りになる感じです(笑)
上背もあってガタイもいいですし、2幕のマスカレードの時のクリスティーヌのリフトがものすごく高さがある!と巷(一部の)で話題になっております。
本当に韓国男子、ですね。
涼太くんみたいなお坊ちゃん臭はないですし、北澤さんみたいな貴族臭もなくて、若々しくて血気に逸る伸び伸びしたラウルっていう感じかな。
声もまぁまぁ伸びやかで、悪くなかったです。
ただ、前述したマスカレードで、クリスティーヌのリフトは高くていいのだけれど、それ以外のダンスがあまりにもカクカクしていて振りの全てがぎこちなさ過ぎて、笑いそうになりました。
ドンヨン、ダンス苦手なのね…。
かなり年上お姉さまでクリスティーヌとしてはもう大ベテランの苫田さんにリードして引っ張ってもらっている雰囲気が満々でした(笑)
ま、これからだんだんこなれていくのですよね。

そんな感じの横浜初回で。
あ、佐野ラウルと苫田ちちクリスの"The Point of No Return"は、やっぱり濃ゆ~~~くて、観応え聴き応え満点でした。
官能だだ漏れ。
何度観ても、このシーンが一番好きなんだなぁ。
音楽も、衣装も、シチュエーションも、すべて。

P.S.この日、うっかりチケットを家に置き忘れて出てしまい(手帳に挟んでいるつもりだった)、劇場入口で煩雑な手続をして、お忘れ券で何とか入れてもらいましたが。
家へ帰ったら必ず手持ちチケットの半券(バーコードが付いている方)を四季の事務局宛てに郵送するように念押しされました。
転売防止のため、ここのところ四季のチケット管理もかなり厳しくなっている様です。
エイプリル・フールに起きた、冗談みたいな本当の話。

Sat Matinee Apr.1 2017 KAAT神奈川芸術劇場 大ホール 1階4列目
by bongsenxanh | 2017-04-24 00:31 | 観劇レビュ 国内etc. | Comments(0)


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