さて、昨日「玉石混淆!」と書いた『レ・ミゼラブル』です。
この作品を観るのは随分久し振りです。一昨年くらいにキャストを大幅刷新したのでしたっけ? その時の顔ぶれがあまりにあまり・・・だったので、チケットを買う気にもなれずスルーしていたのでした。というわけで、観劇記録を調べてみると・・・おぉ、2000年12月に帝劇で観たのが最後でした。つまり、丸5年強振りでの『レ・ミズ』ということになります。 キャストを書いておきますね。 ジャン・バルジャン=山口祐一郎、ジャベール=鈴木綜馬(芥川英司)、エポニーヌ=新妻聖子、ファンテーヌ=シルビア・グラブ、コゼット=河野由佳、マリウス=泉見洋平、テナルディエ=佐藤正宏、マダム・テナルディエ=森公美子、アンジョルラス=坂元健児 (敬称略) で、この中で誰が「玉」で誰が「石」だったかと申しますと・・・ 「玉」=新妻聖子、森公美子、鈴木綜馬、佐藤正宏 「石」=河野由佳、その他大勢のアンサンブル、指揮者とオーケストラ 「石になりかけ?または際どいラインにいる人」=山口祐一郎、泉見洋平 「その他」=坂元健児、シルビア・グラブ でした。 あのー、誤解のないように書いておきますと、私は山口祐一郎さんのファンです。なんと言っても私をシアターゴーアーの道へずりずりずりっと引き摺り込んでくれたのは、彼のファントムですから。なので、往時の彼の姿・歌唱を知っている身からすると、昨日のバルジャンは本当に「なかったことにしてほしい」くらいの出来でした。山口さん、確実に「玉」のはずの人なのに、いったいいつから「石」になってしまったのでしょう・・・。と言うか、この人は日によってものすごくムラのある人なんですよね。絶好調でノリにノッてびんびんの歌唱力で酔わせてくれる日もあれば、「前日飲み過ぎちゃったのかな?」というくらいに絶不調の日もあり。そして、もしかしたら年齢的なこともあるのかもしれませんが、声がまったく前に向かって伸びてこないのです。口先で唸っているだけのようで、全然響かない。TVドラマに出たりするのもいいけれど、ヴォイストレーニングちゃんと続けてるのかな?と余計なお世話なことを考えたりもしました。なんと言ってもこの作品の主役であり、「肝」なわけですから、もっと気合を入れて頑張ってほしいものです。ミもフタもないことを言ってしまえば、そもそもこの役は山口さんのキャラクターには合っていない役だと思うのですけどね、最初から。この人はやっぱり「俺様キャラ」の役が合う人なのです。善意で徳高く生きようとする爺さんではなく。 「その他」にした二人はなぜか、と言いますと、シルビアさんは持ち声が低い人なので、このファンテーヌという役には当てはまらなかったということ。決して下手なわけではないのだけれど、違和感があり過ぎました。薄幸のファンテーヌが歌う"I dreamed a dream"が、力強過ぎて、薄幸に見えませんでした(^^;)ファンテーヌ、それならたくましくシングル・マザーとして生きていけるよね?という感じで。 坂元くんは、良かった!バリケードシーンで登場した時からびしびし通るよく響くお声。なので「玉」に入れてもいいかな、と思ったのですが、坂元くんもこのアンジョルラスという役には今ひとつだったかな・・・と。いや、あまりにも今までアンジョルラスを演じていた岡幸二郎くんのイメージが定着し過ぎていて、ちょっとつらかったのかな。これはこちらの一方的な印象ではありますが。岡くんがなまじ身長が高くてすらっとしていて、そして「リーダー!!」という風格と気品のあるアンジョルラスだったので、身長があまり高くない坂元くんは不利だった感じがします。ちびっ子アンジョルラス、学生たちの中に埋もれちゃっていました(^^;)熱くて、いい演技ではあったのですけどね。でもバリケードで集中砲火を浴びてバリケードの向こう側に落ちていくところ、ひらりと身をかわしてキレイに落ちて行き過ぎでした(笑)まるで鉄棒の競技をしているかのようでした。新体操やっていたから、身のこなしがそうなっちゃっているのかもしれないですね。 話の流れで「玉」の人たち。中でも特に新妻聖子さんのエポニーヌは素晴らしかったです!!1幕幕開けからバルジャンとアンサンブルにかなりガッカリしていたので、新妻エポニーヌが登場して歌い始めた途端、「おおぉ?!!」って我が耳を疑いました。それくらいに、出色の歌声でした。私は帝劇の『ミス・サイゴン』再演を観ていないので、彼女のキムも観ていなくて、これが初観だったのですが、本当に素晴らしかった!!歌声や発声の仕方、歌う時のクセがとっても島田歌穂さんに似ていますね。そしてただばしばし歌うのではなくて、歌詞やひとつひとつのフレーズに感情やニュアンスを込めるのがとってもうまいのです。その時々のエポニーヌの気持ちがちゃんとこちらまで伝わってくるのです。とても丁寧に濃やかにこのエポニーヌという役を演じていました。マリウスに対する気持ち、振り向いてもらえない切なさがつーん・・・と胸に迫ってきて切な過ぎるエポニーヌでした。どうしてマリウスみたいなあほぼんを好きになっちゃうのかなー、エポニーヌ・・・とまで思ってしまいました(笑) 森公美子さんは言わずもがな、ですね。歌・声量の安定感は言うことなし!そして演技もきちんとツボを押さえてたっぷり笑わせてくれるコメディエンヌっぷり。最高でした。同じくテナルディエの佐藤さんも、しっかり脇を固めていて、このテナルディエ夫妻は安心して観ていられました。 そしてジャベールの芥川さん(すみません、私にとっては今でもやはり芥川さん・・・)。想像していた通りの芥川ジャベールでした。この人、歌い方が硬いんですよねー。それが持ち味なんですけど。台詞回しもカクカクしていて滑舌が良すぎるくらいですし。それがこのジャベールという役には合っていたかな、と。その硬さゆえにジャベールの冷徹さが際立って良かったです。歌も安定していました。若干、ジャベールにしては歌がソフト過ぎるテノールのような気もしますけれどね。もう少し荒々しさがあってもいいかな。今更言っても仕方ないけれど、やはり私の中ではジャベールは村井国夫さんが不動の存在です。 さて。では「石」の人は・・・・・・?そうです、最も救いようがなく「石」だったのは、河野由佳さんでした(毒舌ですみませぬ)。コゼットって、演技はイマイチだろうと、ともかく歌えないとお話にならない役ですよね?この作品の中では一番声域が高くて「美しいソプラノ」が要求される役です。なのですが、河野さん、鼻で笑っちゃうくらいに声の出ない人でした。形容ではなくて、実際に声が出ていない。コゼットが歌っているはずのフレーズが客席まで聴こえないのです。酷い。酷過ぎる。あれだったら、そこらの音大生の方がずっとずっといい歌を聴かせられますよ!!この人のプロフィールを私はよく知らないのですが、ちらっと見た感じではTVCMやドラマにちょこちょこ出ている新人さんなんですかね?どうせまた新人売り出しのために東宝がゴリ押ししたキャストなんでしょうけれど、もうそろそろそういうのカンベンしてほしいです。でも考えてみればコゼットっていつも「犠牲」になる役ですね。前は安達祐○ちゃんとかto○koとか、他にもいろいろ・・・ちょっと人気が落ちてきたな、という時期のアイドルがキャスティングされたりしてましたものね。でもそういうのってやっぱり作品に対しても、高いチケット代を払って観に来るお客さんに対しても冒涜だと思うのです。 そしてアンサンブル。もうこちらもどうにかしてほしいレベルでした。『レ・ミズ』では群集=アンサンブルも大きな要素になるのに。歌える人を揃えないと"ONE DAY MORE"みたいなビッグナンバーの迫力が落ちてしまうのに。どうしてこの程度のアンサンブルしか揃えられないんでしょう?あぁ・・・・・・と、脱力してしまいました。更に更に、オケと指揮者!!役者の歌と出だしもソロナンバーの時のタイミングも全然合っていないのです。どうなっているのだあぁ?!!もう聴くに耐えなくて泣きたくなりましたよ。あんなにも歌と伴奏が合わないのなら、いっそ生オケじゃなくてカラオケにしちゃった方がマシなんじゃないの?!と思わされました。妙~にドラムの音が飛び出たり外したりしていたし・・・・・・。 『レ・ミゼラブル』って「憐れな人たち」の意味ですが、むしろ「憐れなり、今日のこの出来!」とでも言いたいような舞台でした・・・。 あぁ、最後に「石」について書いてきたらまた怒りと悲しさがこみ上げてきてしまいました。もう当分、東宝の作るミュージカル、観なくていい。日本でこんな酷いもの観るくらいだったら、そのお金を貯めておいてBWでいいもの2本観よう、と思いました。東宝のミュージカル、身の程知らずにチケット代が高過ぎるんですよね。あの出来で、A席13,500円も払わされたらたまらないな、と思いました。幸い、私はB席7,000円でしたけど。それでも惜しかったかも。 最後に、作品について。いい作品だとは思うのですが、バルジャンが司教によって「魂を救われ」て、そして新たな人生を歩み始めようとするところ、更にはなぜファンテーヌの娘を引き取るのかというところ、あっさり描き過ぎていますよね。長い話なので端折らざるを得ないのでしょうけれど、ファンテーヌとのエピソード、コゼットを引き取ろうと決意するところ、もう少し丹念に描かないとその後のストーリーにリアリティが出ない・・・という気がします。う―――ん・・・でもミュージカルだから仕方ないのかな。 Fri Evening 10Mar.2006 中日劇場
by bongsenxanh
| 2006-03-11 22:25
| 観劇レビュ 国内etc.
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Comments(2)
レ・ミゼラブル、そんなことになっているんですか・・。日本初演とその次ぐらいを見たのですが、当時は素晴らしかったんですけどね。歌えない人をキャスティングするのは、いいかげん止めて欲しいですよね・・。私は今、日本版Beautiful gameがどうなっちゃうか、祈るような気持ちでいます。ロンドン版を見損ねたので、日本版のチケット買ったのですが、キャストを見て、心配で・・。
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bongsenxanh at 2006-03-13 02:22
レ・ミズ、今でも「当たり」の日もあるんですよ、たま~にですけど・・・。
東宝のあの「最初にまず名前が知れた芸能人ありき」のキャスティングを見ると、いつも本当にがっかりさせられますね。 Beautiful Gameご覧になるんですねー。 確かに日本版のキャストは・・・不安が募りますねぇ f^^; ジャ○ーズに興行権を買われてしまった時点で、ある程度覚悟しなきゃいけませんよね。 でも、予想外でいい舞台が観られたりするかもしれませんから・・・そちらになることをお祈りしてます!
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by bongsenxanh
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