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『The Virtuoso』 リヒテルというピアニスト
エッセンシャル・リヒテル The Virtuoso
エッセンシャル・リヒテル The Virtuoso

先日、日曜の深夜にNHK BSでリヒテルのドキュメンタリーを放送していました(朝方3時半過ぎまで見てしまいましたよ...)。見た後、すぐにこのCDを引っ張り出して聴いてしまいました。
リヒテル。リヒテル。冷戦時代に、鉄のカーテンに覆われた向こう側の国にいて、長い間"謎のピアニスト"と言われたリヒテル。超人的な技巧を持つと言われながら、ずっとヴェールに覆われたままだったリヒテル。そのヴェールが取り払われた後、世界中の人々を魅了してやまなかったリヒテル。でも、飛行機が嫌いで海外に行きたがらなかったリヒテル。完璧主義者だったリヒテル。そのドキュメンタリーの最後に、リヒテル本人が語っている映像がありました。年取った彼は右手で頬杖をついて、半ば頭を抱えるようにして、不機嫌そうにこんなことを言いました。

演奏の時には自信に溢れている。でも、後から後悔が押し寄せる。
いくらやってもやってもダメだ。
自分が気に入らない。
終わり。

私、この人が大好きだ、と思いました。そのおじいちゃんになったリヒテルを強く抱きしめたいような気持ちにかられました。リヒテル、物凄い才能の持ち主なのです。彼こそは本当に"巨匠"の名に相応しいピアニストです。にも関わらず、ずっとずっと彼はもっと高いところ、自分の理想とする遥かな高みを見上げて、葛藤していたのでしょう。
そのリヒテルの巨匠ぶりが堪能できるCDがこれ。リストの超絶技巧練習曲5番『鬼火』、8番『狩』、10番が収められている他、ショパンの練習曲作品10の1,2,4,12と作品25の6,8,12とシューマン、ブラームスなども入って、彼の凄さがたっぷり味わえます。なんてったって、CDタイトルがそのものずばり『Virtuoso=巨匠』ですから。
by bongsenxanh | 2007-08-04 01:51 | 音楽 | Comments(0)


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