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声を聞く
私が3月のメトロポリタンで新たなお気に入りを見つけた、と言っていたのはこちら。
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Jules Bastien-Lepage(ジュール・バスティアン=ルパージュ/1848-1884)の『Jehanne Darc (ジャンヌ・ダルク)』(1879)。メトロポリタン美術館では当然英語表記で「Joan of Arc」となっていたけれど、それでは誰の名前だか...という感じなので、ここはひとつ仏語表記で。
私はこの画家のことをまったく知らず、この絵の存在も知らず、初めて生でこの絵に出会った。敬虔なクリスチャンの方の間では非常に有名な絵らしい。
クリスチャンでなくとも、この絵の美しさ、決してゴージャスではないのに、絵から発散される神々しさにははっとするものがある。ジャンヌ・ダルクが両親(農夫だった)の家の庭で神からの啓示を受けている場面。ジャンヌの背後でその啓示を告げているのは大天使ミカエルと聖女カトリーヌ、マルグリット。



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ジャンヌをアップで。このジャンヌの表情―あまりに重く厳かな啓示に呆然とし、同時に何か決意を固めているかのような―が、観る者に凛とした気持ちを抱かせる。非現実的な場面であるのに、自然主義に徹した筆使いと色彩で描かれているところもこの絵を魅力あるものにしている。少し、アンドリュー・ワイエスの描く世界にも通じている気がする。

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ジャンヌの背後の林の中に浮かび上がる大天使ミカエルと聖女カトリーヌ、マルグリットの姿。大天使ミカエルは金綺羅の甲冑を着ていて、結構派手なのだけれど。でも派手派手に見せないところが画家ルパージュの腕か。このミカエルの姿はまさに超現実的なのに。それがしっくりこの絵画の中に溶け込んでいて不自然に感じさせないところが見事。


こういう絵画を隠し持っていて(いや、隠していたかどうかはわからないが、少なくとも私は今までメトロポリタンで目にしたことがなかった)、何かの機会に「こんなのも持っていたんだ、実は」と見せられる辺り、やはりメトロポリタン美術館という美術館は只者ではない...と思わされる。
by bongsenxanh | 2008-08-03 17:19 | 美術 | Comments(0)


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