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カテゴリ:映画( 123 )
『この世界の片隅に』
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年の瀬に一緒に仕事の研修を受けていた年下の男の子(20代前半!)に、「『この世界の片隅に』良かったですよ。少なくとも『君の名は。』なんかよりずっといいですよ。ぜひ観てください」とお薦めされていたので、観て来ました。
『君の名は。』がお好きな方には申し訳ないけれど、確かにずっと良かったです。
いや、『君の名は。』は、あれはあれで良いのだと思うのだけれど。
作品の質が、全然違うのです。

平凡な、でも穏やかで満ち足りた日常生活の中に、じわじわとひたひたと戦争が入り込んでくるっていうのは、こういうことか…と。
そうでありながらも、日々は続いてゆき、日々の生活を地道に積み重ねていくことはこんなにもかけがえのない貴いものであるのか、と。
『夕凪の街 桜の国』が衝撃的だったこうの史代さん原作のアニメーション化作品。
主人公のすずさんを演じたのんの声―と言うか、演技―も、とても良かった。
私、彼女は演技力があるのかないのか、上手いのか下手なのか、それともヘタウマなのか、今一つ判じかねていたのですが、この作品の演技は、本当に"天性のカン"みたいなものがあるなぁ…と思わされました。
ぼ――っとした、のんびりした性格の主人公、という役どころも合っていたのかも。
すずの夫の周作さんを演じた細谷佳正さんも良かった。本業の声優さんなのですよね?
最近、声の仕事としては素人同然の俳優がアニメ映画のアフレコをすることが多くなってきたけれど、やはりプロフェッショナルの声優さんは好いなぁと思いました。

ぼ――っとしていたすずが、少しずつ、色々なものを失ってゆき、そうしていく中で少しずつ倦んでいく様がありありと描かれていて、胸が痛みました。
じわっと涙が出て、思わず頬を伝いました。
白く閃光が光った時。

あ、でも、大きな視点で見ると、この作品はラヴ・ストーリーでもあるのです。
お薦め。
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by bongsenxanh | 2017-01-20 23:57 | 映画 | Comments(0)
『剱岳 点の記』
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昨年のGW頃にBSで放送していて録画したままになっていたものを、今頃になってようやく観たのです。

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こちらね。


明治末期、日本陸軍が軍事力強化のためにと急ぐ日本地図の完成に向けて、最後に残された日本海側の北アルプス、前人未到の剱岳の測量に命懸けで挑んだ男達の物語。
新田次郎原作作品。

いや―――、かねがね、一番最初にその山へ足を踏み入れて道を作った人達はなんて凄いんだろう…と畏敬の念を抱いていたのですが、まさにその"最初に山へ足を踏み入れた人達"の話です。
しかも、その足を踏み入れる山は、あの剱岳
魔の山ですよ。
この作品の中では「死の山」と呼ばれていますが、まさに。
これ、少しでも山を歩いた方ならおわかりになるかと思いますが、この映画を撮るということは、想像を絶する様な過酷なロケを敢行しなければいけないということで。
スクリーンの中に描かれているのを遥かに上回る壮絶さだったことが、容易に窺われます。
それの証拠に、どうも本作よりも、この作品のメイキング作品の方がよっぽど見応えがあって面白いとか何とか…。

劔岳 撮影の記 標高3000メートル、激闘の873日 [DVD]

それはさておき。

この作品を観始めてすぐ、

あ―――、私やっぱり、
浅野忠信が大好きだ―――!!!
と思いました。
いやもう、剱より何より、そのことを思いました。すみません。
何なんでしょうね、この俳優さんの存在の仕方は。
そこに立っているだけで、佇んでいるだけで醸し出される迫力の様なものは。
それでいて演技している気配が漂って来ないと言うか。
どうにも上手く言い表せないので、あとは映画を観て下さい。

共演の香川照之さんも非常~~~に!良かったです。朴訥で。

浅野さんも香川さんも、山登ラ~でも何でもないのに、この撮影のために剱岳と下界を何往復もしたんだよなぁ…凄いなぁ、役者さんって。

他にも皆さん、良かったのですが。
唯一、宮崎あ●いちゃんだけが残…もごもごもご。
あのー、ファンの方には本当に申し訳ないのですが、私、未だかつて彼女の演技や在り方を良いと思ったことがほとんどなく…とりわけ、私の好きな作品や硬派作品には出来れば遠慮していただければと思うことも多く…もごもごもご。
硬派作品ではないけれど、三浦しをんちゃんの『舟を編む』の時にも、どう考えてもあの役は彼女の役ではなく…もっとたおやかでしっとりした純和風美人な女優さんに演じてもらいたいなぁ、と。

話は逸れましたが。
これを撮影しようと思った木村大作監督は凄いなぁと思い。
(そう言えば、前に機内で観て割と良かった『春を背負って』も木村監督作品だった。あれも撮影は立山でしたね)
画像的な凄さと同時に、この原作を書いた新田次郎氏の凄さもまた、改めて感じた新年第一作でした。
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by bongsenxanh | 2017-01-11 01:44 | 映画 | Comments(2)
『Fantastic Beasts and Where to Find Them』
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色々なことが年末進行で、忙しいにも関わらず(ヒョシンさんの『PHANTOM』のことも書けていないし)、こちらを観て来ました。
ファンタスティックビースト。
この作品の制作が発表された時に、「どうしてエディ・レッドメインが今更ハリー・ポッター映画?」と訝しんだものでした。
だって、エディですよ?!
『My week with Marilyn』『Les Miserables』も経験してきて、ホーキング博士を演じた『The Theory of Everything(博士と彼女のセオリー)』でアカデミー賞の主演男優賞まで獲って、続く『The Danish Girl(リリーのすべて)』でもその演技で話題をさらって。
それがなぜ今更、ハリポタ映画なんて…と。
それくらい、英国俳優にとってはハリポタ映画って大きなブランドなのかしら。
で、ともあれ、エディが主演でなければ観なかったかもしれないハリポタのスピン・オフ映画は…

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by bongsenxanh | 2016-12-27 23:57 | 映画 | Comments(0)
『聖の青春』
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私にしては珍しいものを、と思われるでしょうか。
こちらの映画を観てまいりました。

あの、別にカミングアウトというわけではないのですが、実は私、10代の一時期、プロ将棋の世界に熱中していた頃がありまして。
まだ羽生さんが名人位を獲る前で、もちろん、七冠になって世間に持て囃される様になるのよりも前で。
(むしろ、羽生さんが七冠になった頃は、私の将棋熱は醒めてきた頃だった)
何がきっかけだったかは今となってはもう覚えていないのだけれど、その頃、プロ棋士の郷田真隆さんが大好きだったのです。
郷田さんの紋付袴姿、凛々しくてものすごく格好良かったのです。
今、自分で思っても変な10代女子だけど。
月刊誌の『将棋世界』を毎月購読するのはもちろんのこと、公開されている将棋トーナメントの対局も見に行ったりしていました。
(相当変な10代女子だ。周りはおじいさんばっかりだった記憶が…)
小学校低学年の頃に覚えて将棋は指せたし、詰将棋もやっていたので。

というわけで、この映画、村山聖さんのことを知らない人達にも話題になっている様なのですが、私にとってはリアルタイムで姿を知っている"あの村山さん"を松山ケンイチさんが演じるということで、かなり気になっていました。
私が熱中していたあの時期に、村山さんはまさに飛ぶ鳥落とす勢いだったのですよね。
東京へ移ってからは郷田さんとも仲が良くて、一緒に遊んでいる様子だったし(そんなことまで知っているミーハー)。
懐かしいなぁ。
相次ぐ引っ越しであの当時の『将棋世界』はもう廃品回収に出してしまったけれど、今手元に残っていたら、村山さんの在りし日の姿や、まだ20代になりたての頃の羽生さんや郷田さんの姿も見られるのになぁ。
来週で公開が終わってしまうという今頃になってようやく観られました。

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by bongsenxanh | 2016-12-13 23:39 | 映画 | Comments(0)
『SULLY』―ハドソン川の奇跡
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昨日、こちらを観て来ました。
先月から公開していて、観たい観たいと思っていたものの、私の身近な場所の映画館の上映時間と私の都合とがなかなか合わず…今週でもう公開終了してしまうというこのタイミングでようやく観られました。

まだ記憶に新しい2009年1月15日の"ハドソン川の奇跡"で、当日の事故機を操縦していたチェズレイ・サレンバーガー機長(愛称Sully)をめぐるお話。
バード・ストライクによる双エンジン停止という緊急事態に遭遇し、瞬時の判断でエアバスA320機(日本ではANAがよく飛ばしているあれですよー)をハドソン川に不時着水させ、乗客乗員155人全員を救い、一瞬にして"英雄"ともてはやされる様になったサリー。
しかし、国家安全運輸委員会(NTSB)は「ラガーディア空港への引き返しは可能だったのではないか?」「左エンジンは損失しておらず、飛行可能だったのではないか?」「なぜハドソン川などへ不時着水して、乗客を危険に晒したのか?」として、厳しくサリーを追及する。
自分の判断は正しかった、と確信を持っているものの、次第に追い詰められていくサリーは…。

私、頭のどこかに知識としてはあったのですが、エンドロールでその名前を見るまで、この映画がクリント・イーストウッド監督作品だということを失念していました。
で、そのお名前を見て、あぁ、そうか…と非常に得心が行き。
『American Sniper』の時もそうだったけれど、イーストウッドは、望むと望まざるとに関わらず外野によって"国民的英雄"に祭り上げられた人を日和りもせず突き放しもせず、ただただ客観的にじわじわとカメラで追うことでその内面に迫っていくという手法に非常に長けている。

そしてまた、そのイーストウッドの手腕で浮かび上がってくるサリーという一人の機長(パイロットという職業人と言ってもいいと思う)を、トム・ハンクスは相変わらずの彼らしさで演じている。
そう、トム・ハンクスはいつどんな役を演っても、トム・ハンクスだ。
それは彼が大根役者だという意味ではなく。
何て言うのか、トム・ハンクスが演じている信頼性みたいなものがあると思う。
私は特別、彼のファンでも何でもないけれど。

そう言えば、この作品のパブリシティで先月来日していたトムが、インタビューの中で今回の大統領選に触れて「僕はヒラリー支持だけれど、でも、いずれにせよこの騒々しいお祭り騒ぎは11月8日になれば終わるよ」と、ちょっと呆れ気味に語っていたのが印象に残っている。
そのお祭り騒ぎが終わった米国時間11月8日(日本時間11月9日)にこの映画を観たのは、奇妙な偶然だ。
そして更に、トムが支持すると言っていたヒラリーが敗れたのも、皮肉な結果だ。
ま、トムに限らず、NYの劇場関係者も舞台俳優も、LA(ハリウッド)の映画関係者も俳優も、皆軒並みヒラリー支持と言うか、民主党支持者なのだけれど。
「米国の東西沿岸部だけ見て米国を知った気になってはいけない」と、言われたことがある。
むしろ米国の本質は内陸部にある、と。
沿岸の都市部と、内陸の田舎では、経済格差も教育格差も、人種観も世界観も全然異なるから、と。

この映画が描いている"ハドソン川の奇跡"が起こったのは2009年1月15日で、ちょうどその当時、バラク・オバマが当選を果たして大統領に就任をしたのも因縁めいている。
サレンバーガー機長は、オバマ大統領の就任式に「是非に」と招待されたのだそうだ。
映画をめぐって、前回の大統領選、今回の大統領選に様々思いを馳せてしまった。
ちなみにクリント・イーストウッドが昔から強固な共和党支持者なのは有名な話。
けれど、その彼でさえ、今回はトランプ支持の立場を明確には示さず、党大会に姿を現すこともなかった。

字幕は安定の松浦美奈さんだった。
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by bongsenxanh | 2016-11-10 23:11 | 映画 | Comments(6)
『永い言い訳』
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水曜日の夜に、こちらの映画を観て来ました。

詳しい内容は知らずに、西川美和監督だということと、本木さんが深津絵里ちゃん演じる妻が亡くなっても何も感じないダメ男だ(しかも、妻が亡くなった時に他の女と情事の真っ最中だった)という設定だけを知って、観に行きました。

いや―――、そういう前知識を持ってはいたけれど、実際に観てみて、本木さんは聞きしにまさるダメ男でした(あ、役の上で、ね)。
こんなにも男として最低過ぎる男っているのか、という(しかし、世の中には沢山いるのよね、実際に)。
本木さんが監督と一緒に出演したTVのインタビューの中で
「今まで演じたどの役よりも素の自分の性格に近い、決められなくてどっちつかずの、ダメな人間」
みたいなことを話していて、監督も本木さんはそういう人だ、という様なことを語っていたけれど。
うん、確かにそうなのかも。
今まで観た"立派な人"を演じているどの本木さんよりも、本木さんらしさが出ていると言うか、無理に演技していない自然な感じの本木さんでした。

また、本木さん演じる人気作家のマネージャー役・池松壮亮くんも嫌~な感じなのですよね。
映画中で、本木さんと同じく事故で妻を亡くした竹原ピストルさんの子ども二人を本木さんが面倒を見るようになるのだけど、それに対して池松くんが「まー、育児って、わかりやすい贖罪ですもんね」みたいな台詞を言うシーンがあるのですが、それがもう、嫌な奴度高くて高くて。
池松くん、演技力があるがゆえなのでしょうけど、どの役で見ても嫌な奴にしか見えない(^^;)
私が彼を特に「この人、嫌だ」と思ったのは、映画版『紙の月』でしたっけ。
宮沢りえちゃんが主演した方のね(TV版の方が原田知世主演)。
池松くん、そう言えば私、彼のヤング・シンバも観ているような気がする…。

ちょっと話が逸れましたが。
改めて、西川美和監督は、人が普段は人に見せないようにしている人間の嫌なところ、汚いところを「これでもか!これでもか!」とえぐり出して見せる監督さんだなぁ…と思いました。
『ゆれる』の時にもつくづくそう思ったし、『ディア・ドクター』の時は少しはユーモラスで緩和されていたけれど、それでもやはりそういうところはあるし。
今回、観ている途中で、何だか『そして父になる』を彷彿とさせるような色彩を持っている映画だなぁ…と感じたのだけれど、最後のエンド・ロールのクレジットを見て納得しました。
原案(?)が是枝裕和監督だったのですね。
そして、知らずにいましたが、西川監督はそもそも最初、是枝監督の元で修業を積んだ人なのですね。
納得、納得。

自意識が強過ぎて人にいい恰好ばかりしようとする、そのくせ狡くて卑怯な小さい男が、幾多の苦難を乗り越えて最後には"善人"になりましたとさ、みたいなお綺麗過ぎる物語ではなく、最後にもやはりほろ苦さの残る終わり方をするのが、西川監督らしい映画でした。
あ、そうそう、物語の終盤の重要なシーンで手嶌葵ちゃんが歌う『オンブラ・マイ・フ(Ombra mai fu)』が流れるのだけれど。
これ、オペラの中で王様が自分の国の領土を見渡して、「おぉ、わが愛しき木陰よ、優しき木陰よ」みたいに歌うアリアなのですよね。
監督がどういう意図であの場面にこの歌を宛てたのか、わかりませんが、私にはすごく皮肉に聞こえてしまったりしたのですが…。
またね、葵ちゃんのあのウィスパー・ヴォイスで歌われたりするものだから尚更ね。
それとも単に教会に響く讃美歌の様な、癒しの歌として使ったのかしら?

で。
今回のこの映画の中で、一番の熱演賞を、私は子役の藤田健心くんにあげたい。
素晴らしい演技でした。
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by bongsenxanh | 2016-10-29 22:19 | 映画 | Comments(0)
『The Correspondence』―ある天文学者の恋文
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昨日、こちらを観て来ました。
邦題、雰囲気を表している様なない様な…何か、違うかも。
ジュゼッペ・トルナトーレ監督の新作、音楽はもちろんエンニオ・モリコーネ!ということで、ちょっと期待して行ったのですが…私には今一…と言うか、全然…響きませんでした。
ジェレミー・アイアンズは相変わらずセクスィーな爺ちゃんなのですけどね。
(と言うか、彼は私が物心ついた時から既にセクスィーな爺ちゃんだったよ!何年生きているの?!)
あれかなぁ、ヒロインのオルガ・キュリレンコが私にはあまり魅力的に見えなかったからなかなぁ。
つか、そもそも設定が全然惹かれないのよねー。
ジェレミーもオルガも、どちらもものすごくエゴイスティックで。ご都合主義で。
高名な天文学の教授とその優秀な教え子が、周囲には秘密の不倫関係で、教授は教え子には病気であることを内緒にしていてある時突然亡くなり、教え子の元には教授が残した手紙やらメールやらメッセージを記録したDVDがばんばん届き始める…って、何なのでしょ?
そしてその教え子もまるで自分が悲劇のヒロインみたいな顔してて…。
あと、教授がオルガを愛情を込めて「カミカゼ」って呼ぶのが引っ掛かった。
オルガが柔道を習っていて、危険なスタントのバイトをしているという設定で、トルナトーレ監督が日本贔屓なのでしょうけど、カミカゼって安易に使って良い単語ではないですよね。
と言うか、ポジティヴな意味合いで使う単語ではないと思う。
何だか何だか何だか。
風で飛んでくる木の葉とか、寄ってくる鳥とかの合成映像も粗かったし。
ちょっとだけ、「これはもしやトルナトーレ監督の遺書代わりの作品?」とも穿ってしまったけれど。
で、トルナトーレ作品の割にイタリア語ではなく、英語(英国英語)だったけれど。
冗長で、全然ロマンティックではなくて、つまらなかった。
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by bongsenxanh | 2016-10-01 20:56 | 映画 | Comments(8)
『君の名は。』


私にしてはちょっと意外な映画を観て来ました。
知り合いの大学生男子に「すごくいいから絶対に観て!俺、2回も観た」と強烈にお薦めされたので。
日曜日の夜の回だったにも関わらず、田舎のシネコン、結構な入りでした。
やはりまだまだ観客動員、伸びている最中なのでしょうね。

書くとすべてがネタバレになってしまいそうなので、さらりと。
私、この新海誠監督という人のこと、全く知らずにいて、もちろんこの作品で初めて観たのですが。
この作品に関して言えば、大林素彦監督の『転校生』『時をかける少女』の影響をとても受けているかな、と。
作品の冒頭、ヒロインが住む場所がまだわからない状態で出てきた風景描写や坂道の雰囲気が尾道にどことなく似た感じがしたのもあり。
そして、知らずにいたがゆえなのですが、ものすごく美しい風景や自然の描きこみ方に魅了され。
後から知ったのですが、そうした風景描写でとても評価の高い監督さんなのですね。
べったりした作画しかしない細田守監督の作品よりも、ずっとずっと好きだと思いました。
物語の作り方も。

ほとんど予備知識を入れずに行ったので、よくある「男女入れ替わりもの」の「ベタな高校生ラブコメ」だとばかり思って観ていたのですが(エライ先入観だのう、すみませぬ)、途中から全く予期していなかった展開で、少し怖かった部分もありました。
いやはや、いやはや。
パラレルワールドの様で、所々矛盾点もないわけではなかったのですが。
そういうことをさておいても、よく出来ていたと思います。
夏の終わりに観るにはぴったりの、爽やかさと一抹の切なさがあって。
やや、中二病の思春期の男の子たちが喜びそうな映画だな…と思わないでもなかったけれど。

普段観ないこういうアニメ映画をわざわざ映画館まで観に行ったのは、主人公の男の子を神木くんが声を演じているからだ、ということもここに告白しておきます。
神木くん、やっぱり良かった。
モノローグの語り方とかね、女の子口調とかもね。

そうそう、Eテレでやっている『達人達』に新海監督が作家の川上未映子さんと一緒に出ていらした時に、「言葉を大切にしている」監督さんだ…というようなことを川上さんが感想として言っていましたっけ。
(再放送が水曜深夜枠でありますので、見逃された方、どうぞ。)
私も、アニメという枠でなく、そういう"詩"の部分にすごく意識を置いている監督さんだと感じました。
これって、羽海野チカさんが『ハチミツとクローバー』でやっていた手法と通じるものがありますね。

パラレルワールドな部分、確かめるためにもう一度観てみたい気もします。
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by bongsenxanh | 2016-09-12 02:25 | 映画 | Comments(2)
『TRUTH』―ニュースの真相
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こちらの映画を観てまいりました。
何かもう、私ごときがごちゃごちゃ感想を言うのもおこがましいくらい…圧倒的な力を持つ映画でした。
凄かった。
これ、間違いなく、今年のMUST SEE映画の内の1本だと思う。
最近、映画のパンフレットなんて全然買わないのに、思わずこれは買っちまったわ。
あちこちの映画評で同じく報道を扱った問題作『SPOTLIGHT』と並び評されることが多い様だけれど、それも頷ける。
報道を扱った二作がこうして同じ年に公開されて(米国公開はどちらも2015年、日本公開が2016年)話題になるというのは、果たして偶然なのか、はたまた何か世相を反映したものなのか…。

2004年9月、米国大統領選真っ只中。
ジョージ・ブッシュは大統領2期目へ向けて選挙戦を繰り広げていた。
そこへ米国最大ネットワーク放送局であるCBSが一大スクープをぶち上げた。
ブッシュの軍役時代(=ベトナム戦争当時)の、大物政治家である父親の威を借りたコネ入隊&職務怠慢(兵役逃れ)疑惑である。
放送当初は現役大統領の大スクープとしてセンセーションを巻き起こしたが、それはすぐに別のスキャンダルに変わった。
決定的証拠として取り上げた文書に対して偽造疑惑が持ち上がったのだ。
果たしてその真相は…そして、それを取り上げて番組にしたプロデューサー(=ケイト・ブランシェット)とアンカーマン(=ロバート・レッドフォード)の辿る道は…。

最初、アイメイクぐりぐりのケイト様(もう、敬称をつけてお呼びするわよ)を観た時には、「あれ?」と思ったのだけれど、あのパンダメイクになりかけのシャドウが際立つメイクも、敏腕プロデューサーで、かなりBitchな印象のあるメアリー・メイプスという役を表現する一つの道具だったのだと思う。
そして顔中皺だらけ、とにかくしわしわしわしわのロバート・レッドフォードに「あぁぁ、ロバート、本当におじいちゃんになって…」と、何とも言えない感慨を覚えたけれど(リアルタイムではないけれど、『Out Of Africa』(邦題:愛と哀しみの果て)を観たりして、高校時代から憧れの人だったのです)。
この二人の迫真の演技が、この映画の大半を占めていたと思う――とりわけケイトの演技が。
最後の最後に来る、ケイトの独白シーンは凄過ぎて鳥肌が立ったし、その後にケイトが言う"I am what I am."(「これが私よ」という字幕がつけられていた様な)という台詞は、メアリー・メイプスのものでもあったろうし、また同時に演じるケイトのものでもあったと感じた。
(ニュースソースの裏取りは、正直詰めが甘過ぎる、とも思ったけれど)
こちら、参考映像。



思い起こしてみれば、この事件があった2004年は、ちょうど私もNYへ行っていて("Wicked"がトニーを獲った年ですよ)、それも10月でまさに大統領選真っ只中だった。街の至るところに"VOTE OR DIE"という投票を呼び掛ける看板が溢れていた。
劇場に通うのにいっぱいいっぱいで(それは今も変わらない)、NYが、米国が、こんなスクープの渦中だったことも知らずにいたけれど。
この映画が、また話題騒然のヒラリー・クリントンVSドナルド・トランプの大統領選に先駆けて公開されたことは、全く偶然ではないのだろう。
そして、この事件について、きちんと俯瞰&客観的に考えて、結果的には誰が一番得をしたのか。
結局、この一連の偽造文書及び疑惑のリークという計画を企てた大元は誰だったのか。
そこを見極める必要があると思う。
蛇足ながら付け加えておくと、この事件の後に、皮肉と言おうか、ジョージ・ブッシュは再選を果たしている。

メアリー率いる報道チームの誰かが、何かの折に「なぜそんなことをするのか?」と問いかけられた時に、"That’s what we do"と答えていたのも記憶に残った。
「仕事だから」という字幕だったけれど、これはちょっと違うかな、と思った。
字幕は松浦美奈さんだった。

それにしてもこの映画が『SPOTLIGHT』と同じくミニシアター系の扱いって、どうしたことでしょう。
観客動員が見込めない、ということなのでしょうけれど。
こういうのをきちんと全国ロードショウ出来なくて、毒にも薬にもならないちゃらちゃらしたラブコメor漫画の実写化邦画ばっかり垂れ流している大手シネコンが席巻している日本&観客って、実はものすごくやばいんじゃないだろうか。
と、小さく強く、世界の片隅でつぶやいてみたりするのでした。

P.S.映画の中で何度か出てくるテレビ(機器そのもの)が、SONY製で、それも今はなき(もしかしたら今も現役で使われているご家庭もある?)トリニトロンのブラウン管で、非常に懐かしいものに再会したような気分になりました。
  そう言えば、メアリーが息子にねだられたクリスマス・ギフトのハンディカム・カメラを包んでいるシーンで使われていたのもSONYのハンディカムだったなぁ。
  大学を卒業して最初に入った会社がSの字だったので、個人的にちょっと懐かしくて。
  それに対して、メアリーに曰くつきの文書を渡すビル・バーケットの自宅に置かれていたテレビはNEC製で、こちらもちょっと「おっ?」と思った。
  この辺り、道具係さんは意図して用意したのでしょうかね。
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by bongsenxanh | 2016-08-31 00:45 | 映画 | Comments(0)
『Brooklyn』
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シアーシャ・ローナン(Saoirse Ronan)の、こちらの映画を観て来たのです。
(余談ですが、日本ではシアーシャと表記されるけれど、本来の発音だと「サーシャ」なのですよね)
日本公開が決まって、映画館で予告が流れるようになった頃から必ず観ようと思っていたのですが、なかなか観に行く時間が取れず、公開終了間近になってようやく観られました。
『つぐない』でのスクリーン・デビューから、シアーシャのことはずっと観て来ている気がするのですが、彼女は"自分がやるべき作品"をきちんと選んで、そして"自分が演じるべき役"をきちんと演じている感じがしますね。

で、ここに上げた、この映画のポスターやフライヤーで使われているこの画像、観に行く前までは、ただ普通に彼女がブルックリンのとある街角の塀の前に立っているだけの風景だと思っていたのですが。
この映画を最後まで観終わってみると、ただの風景に見えていたこの彼女の姿に、とても深い意味があったのだということに気づきます。
それは映画を観た方のみのお楽しみということで。

お話は、第2次大戦後の不況にあえぐアイルランドの片田舎から、仕事と新しい人生を求めて米国はブルックリン(NYでもマンハッタンではないところがポイント)に渡ってきた内気で不器用な女の子・エイリシュが主人公。
彼女が、全く土地勘もなく、知人も友人もいないブルックリンで、ホームシックに苦しみ、慣れない高級デパートの売り子の仕事に戸惑いながらも、自分の居場所と自分の生き方、更には"新しい自分"へと成長していく様がじわじわと胸に迫ってくる。
決して派手な出来事もものすごくドラマティックな展開もないけれど(むしろ、どちらかと言えば地味な映画だと思う)、シアーシャの瑞々しい演技と感性がひたひたとこちらに伝わってくる。

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見ず知らずの地、ブルックリンでエイリシュが出会ったイタリア移民の男の子トニーを演じるのがエモリー・コーエン(Emory Cohen)。
この映画で初めて彼のことを知ったのですが、最初に登場した時にはそんなに格好良く見えなかった彼が、話が進むに連れてどんどん素敵に見えてくるのが、とても良かった。
最初はちょっと軽薄そうに見えたトニーが(だって、何てったってイタリア男ですもの)、なかなか恋愛モードにならない実直なアイリッシュ・ガールのエイリシュに一途に思いを寄せる様子が、何て言うのか、ものすごく胸キュン(死語)なのですよ!
イタリア移民で、配管工をしていて、「自分は冴えない」と自覚しているトニーが、なりふり構わず必死でエイリシュに思いを捧げる姿がもう、健気で健気で。

そのエイリシュが、自分を米国へと送り出してくれた最愛の姉を失い、一人残された母親を慰めるためにアイルランドへ一時帰国し、そしてその地でまた良家の子息ジム・ファレル(ドーナル・グリーソン/Domhnall Gleeson)と良い雰囲気になった時に、自ら下す決断とは…。
そして自分がこれから生きる地として、米国・ブルックリンを選ぶのか、生まれ故郷のアイルランドを選ぶのか…。

そうそう、上記のジム・ファレルを演じていたドーナルは、『ハリー・ポッター』シリーズのロンのお兄ちゃんのビル・ウィーズリーなんですよね。
で、更にこの映画にはウィーズリー夫人のジュリー・ウォルターズ(Julie Walters)も出演していて。
二人が一緒に登場するシーンはなかったものの、ウィーズリー家のママと息子が共演って、ちょっと面白いですね。
他にエイリシュのお姉さん役のフィオナ・グラスコット(Fiona Glascott)も良かった。
アイルランドがひとつの舞台になっていることもあって、アイリッシュの俳優さんの出演が多かったですね。
シアーシャにしても、ドーナルにしても。
だから、アイリッシュ訛りの英語が自然だったのね(当たり前か)。

原作者は男性なのですが、主人公が女性ということもあって、女性により訴えるものの強い作品だと思います。
私のお隣で観ていた男性は、途中結構眠っていらっしゃった…もったいない。
自分の大切な文机の抽斗にでも、そっと大切にしまっておきたいような作品。
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by bongsenxanh | 2016-08-19 01:15 | 映画 | Comments(0)




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