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『Becoming Jane』
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この映画、観たくて観たくてたまらなかったのです。
でも公開時には映画館へ行けなかったので(ミニシアター系のみの公開でした)、ようやくDVDで。
そもそもこの映画、英国や米国では2007年公開だったのですよね。
あちらでは大ヒットだったそうなのに、日本ではこんなに公開が遅れて、しかもこの扱いの小ささ。
どうも初めにこの映画を買い取った日本の配給会社が倒産した関係らしいです。

それはさておき。
『ジェイン・オースティン 秘められた恋』の邦題になっているこの映画。
邦題の通り、生涯独身を通したかのジェイン・オースティンが、実は若かりし頃にただ一度、激しく深い恋に落ちていた...という新たに発表されたジェインの伝記をベースに作られています。

18世紀、英国。
"愛情による結婚"ではなく"お金のため、生活の保障のための政略結婚"が当然の時代。
20歳の若く才気溢れる自由闊達なジェインは、貧しい家庭と生活から脱却するためにと、両親の勧める地元ハンプシャーの裕福な名士・ウィ―スリー氏との結婚に乗り気になれずにいた。ウィ―スリーはジェイン自身の言葉によれば"Booby(マヌケ、馬鹿者)"で、ダンスも不得手、気が利かない、冴えない男だ。
そんなやり切れない気分でいるジェインの前にトム・ルフロイという男が現れる。彼はアイルランド出身の法律家の卵で、鼻持ちならないところはあるものの(そこがまた魅力)、知的で革新的な価値観を持つハンサム・ガイだった。ただ、致命的に、彼は"財産を持たない者"だった。
ジェインとトムは反発し合いながらも次第に惹かれ合うが―――。

※以下、ネタバレ的個所あります。未観の方はどうぞご注意を。



最初、この映画はただ単に『Pride & Prejudice』を、作者ジェイン自身に置き換えて焼き直しただけの作品ではないか?と思った。
それくらいに、かの作品を意識し、また彷彿とさせるシーンや設定や台詞が沢山ある。
ただ、物語が進んでいくに連れ、あぁ、ジェイン・オースティンは自身にこういうバックグラウンドがあったればこそ、ああいった作品を紡ぎ得たのだ、ということが感じられる展開になっている。


主演のAnn Hathaway(アン・ハサウェイ)は、好演していたと思う。
私は最初、アンはミス・キャスティングではなだろうかと思っていたのだけれど。私自身が、そんなにアンを好もしく感じたことがないせいもあり。『なんたらプリンセス(タイトル忘れた)』や演技力を評価された(らしい)『BROKEBACK MOUNTAIN』や『プラダを着た悪魔』等、彼女の出演作は結構観ているけれど、そのどれを観てもアンを素敵だと思えたことがなかったのだ。
でも。今作を観ていて、アンがキャスティングされたことは納得出来た。彼女は快活で、溌溂としていて、若き日のジェインをとてもチャーミングに演じている。表情演技も豊かで引き込まれる。アン自身が猛烈にジェイン・オースティンのファンで、彼女は大学の論文でもオースティン作品をテーマにしたのだそう。この映画の出演にあたっても、それは細部にわたってリサーチを重ねたのだそうだ。
ただ、アンは、どんなに頑張ってBritish Accentを真似してみても、どうしても英国俳優たちと同レベルまでには至らなくて、Americanになってしまっているきらいがあった。その点においては、彼女のジェインに対する違和感は拭えなかった。
あと、大きく目を見開いて正面(つまりカメラ)を見据えると、やはりアン・ハサウェイ!という色が強く出てしまっていたところも残念だった。あと、中年になって後のジェインになった時の姿がほとんど老いていなかったのも。ジェームズ・マカヴォイくんはちゃんと中年姿になっていたのに比して。
好演はしていたけれど、もっと別の英国女優さんだったら...と思わなくもなかった。
『Pride & Prejudice』のキーラの様な、絶対的に彼女でなければ成立しない、という存在のようには思えなかった。


脇を固める俳優陣は見事だった。
ジェインの父親を演じるジェームズ・クロムウェルも(観たことのある顔だ...と思ったら、『グリーン・マイル』『L.A.コンフィデンシャル』で観たあの役者さんだった、道理で)、ジェインの母親のジュリー・ウォルターズも(ハリポタのウィーズリー家のママです。あと、『BILLY ELLIOT』のバレエの先生)、レディ・グリシャムを演じるマギー・スミスも(同じくハリポタのマクゴナガル先生)、ウィ―スリー氏を演じたローレンス・フォックスも。特にウィ―スリー氏のローレンス・フォックスは、最初は"Booby"と言われた通り、とっても愚鈍な感じがしたけれど、後にはジェインの良き話し相手となっていく変貌振りに知性と品が感じられて良かった。


この映画の醍醐味は、お互いに強く惹かれ合っているのに、お互いの身分と財産ゆえに結ばれず、すれ違う二人のもどかしさ、切なさ、やるせなさに身悶えするところにあるだろう。その身悶えする感じ、胸がきゅんきゅんする感じが乙女(心を持つ世のすべての女性)にとってはたまらないと思う。
そしてこの身悶えと胸きゅんきゅんを抱かせられるのは、脚本の巧みさによる。


で。
私はこの作品で、もう決定的に、James McAvoy(ジェームズ・マカヴォイ)に心臓を撃ち抜かれました。
完璧です。
完膚無きまでに。
マカヴォイくん、『つぐない』でも『ペネロピ』でも、かなり私の心臓を鷲掴みにしてくれましたが、もうこの映画はとどめの一撃に等しいです。
彼はいい作品を選んで出演していますね。
そう言えば『ナルニア』1作目でも彼を観ていたのだったけれど(「悪いフォーン」のタムナスさんです)、あの時も大きな青い瞳がとても印象的でしたっけ。
この映画のどのシーンでも彼は恐ろしく魅惑的なのですが。
それらをつらつら綴りますと。

ジェインが、もう進退きわまって、ウィ―スリー氏と結婚するのもやむなし...と悲愴な決意で臨んだレディ・グリシャムの邸宅でのパーティー。
もしかして...もしかして...と、淡い期待を抱いて、トム・ルフロイの姿を目で探してしまうジェイン。
でも、どこにもトムの姿はない。
やはり、期待しても無駄なのね...とあきらめの境地でウィースリー氏をパートナーに、無表情でダンスを踊るジェイン。
もうどこにも自分の恋には希望も可能性もない。
ジェインが絶望的な気持ちになっているダンスホールに、突如、目の前に現れて蠱惑的ににやりと微笑むマカヴォイくん。
ここ、もう、くら~~~~っと眩暈がするほど、マカヴォイくんは素敵なのです。
と言うか、この絶妙のタイミングの登場が女泣かせです。女の敵です。

そして二人で熱く視線を絡ませ合ったダンスの後で。

マカヴォイくんが湖畔で。

"You must know what I feel.(わかっていてほしい、僕の気持ちを)"
"I am yours.(僕は君のものだ)"
"Jane, I am yours."
"I am yours, heart and soul!(僕は君のものだ、心も魂もすべて!)"
なんて言うセリフで、
きゃ―――――!!


その後、二人がお互いの家族・親族の反対により引き裂かれた後。

またもやマカヴォイくんが姿を現し。


"I cannot do this.(もう我慢できないんだ)"
と言って強引にkissするところで
きゃ―――――!!!


"I have tried, I have tried, and I cannot live this lie.
(努めてはみたんだ、なんとか、でもこんな偽りの人生は生きられない)
"Can you?"
"Jane, can you?(ジェイン、愛してもいない相手と結婚できるのか?)"
"Run away with me.(駆け落ちしよう、僕と)"
って熱情顕わに告白&プロポーズするところで
きゃ――――――!!!


馬車からお姫様抱っこで助け降ろしてくれるところで
きゃ―――――!!!!!


"I will never give you up.(君をあきらめはしない)"
"But you must love me. Do you love me?
(だって君は確かに僕を愛している、愛しているだろう?)"
のところで
きゃ――――――!!!!!!!


とまぁ、きゃ―――――!!!!!のオン・パレードで、頭がくらくらして、どうかなっちゃいそうでした。
マカヴォイくん、なんて罪なの。

マカヴォイくんは、単に仔犬のような瞳がキュートなハンサムくん、というだけではなく、非常に細やかで緻密な演技が出来るところも素晴らしい俳優さんなのです。
その登場人物の心情を、その大きな瞳や、ニュアンスのある表情や、ちょっとしたしぐさや、手の動きや、身振りで、瞬時に表現できてしまうところが、実に素晴らしい。
彼は映画に出るようになるまでにTVドラマや舞台の仕事での下積みが長かったようで、そういった経験も彼の演技力の裏付けとなっているのでしょう(嗚呼、私ったらベタ褒め)。

とにかく、きゃ―――――!!!!!のオン・パレードになってしまいましたが。
いいのいいの、こういうromantic movieは、乙女またはアホウになって、身も心もどっぷり浸って観ちゃった方が絶対に楽しいの。

というわけで、強固に、猛烈に、お薦め映画です。
ただし、きちんと乙女心を持っている方にだけ。
あ、ちなみに私はこれ、忠実にジェイン・オースティンを描いたとは思っていません。
むしろ、フィクションの部分がかなり多いだろうな、と。
実際のジェインはここまで情熱的な恋愛に身を委ねることはなかったのだろうな、と。
でも、これはこれで、良いのです。


すみません、私、当分マカヴォイくんに心臓串刺しにされたままでおりますので。
優しく穏やかに放置しておいてください。

と言うか、マカヴォイくん。
あなたが盗み去って行った私の心臓、返してください。

DVDはこちら↓
Annはこうやってカメラ目線をすると、ジェインではなく、"いつものただのアン・ハサウェイ"になってしまうところが、惜しい。

ジェイン・オースティン
by bongsenxanh | 2010-05-11 00:41 | 映画 | Comments(0)


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