国立新美術館にて。 モネ、マネ、ルノワール、ゴッホ...印象派、そしてポスト印象派のマスターピース。 けれど、惹きつけられたのはそんな名だたる巨匠たちではなく。 出展作品をきちんとチェックせず、把握もしないまま、ふらりと観に行ったのですが。 まさかそこで、スーラが私を待っているなんて、思いもしませんでした。 実物はもっとソファの青が深くて、じんわりと滲み出して来る可愛らしさに満ちている。 退屈そうに大きなソファに身を投げ出しているモデルの女の子が微笑を誘う。 これは思わず買ってしまったクリアファイル。 観た瞬間、はっとするような儚げな美しさがあった。 薔薇の花模様の美しいソファに掛けた、白地に薄い水色の水玉模様が入ったドレスを着た姉妹二人は、二人ともドレスにも負けないほど色が白く、どこか浮かない表情をして絵の中に描かれている。 薄幸そうだ。 手に持たれている日本趣味の扇子と、壁にも飾られた扇子(ドガから贈られたものであるらしい)が、この時代のフランス上流階級の風俗を伝えている。 そして、この日観たどの絵も、一瞬にして記憶から消し去ってしまうような絵が、そこにあった。 この展覧会の中では、順路通り進むと一番最後の部屋に、その絵は展示されていた。 あぁ、こんな印刷物のポストカードでは、とてもこの絵の素晴らしさは伝わらない。 この絵の、色彩も、光も、静けさも。 ジョルジュ・スーラ作 『オンフルールの灯台』 1886年 この絵が視界の端に入った途端、そこだけ、白く、碧く、輝いていた。 同じ部屋に、ゴッホの自画像――荒々しく、鋭く、ギトギトした――が飾られていたけれど、それすらも霞んでしまった。 この絵の前では、知らず知らずの内に、多くの人たちが釘付けになっていた。 私の背後にいた人が、お連れの人に言った。 「これは、今日の一番だね」 この絵の前で立ちすくんでしまい、動くことが出来ず、私はおそらく30分以上もこの絵を見つめ続けていた。 機会があればぜひ、直にこの絵を目にしてほしいと思います。 この絵のためだけにでも、この展覧会は足を運ぶ価値が確かにあると。 国立新美術館は空調効き過ぎて寒いので、羽織るものをお忘れなく。
by bongsenxanh
| 2011-08-14 01:13
| 美術
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by bongsenxanh
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