雪渓の上は、涼しかった。
陽射しのきつい夏山登山なのに、こんなに快適なのか、と思うくらいに。 ただ、思っていたのよりは距離が長く、傾斜もきつく。 振り返って上から眺める大雪渓はこんな眺めだ。 急傾斜なの、おわかり頂けるだろうか。 今まさに大雪渓を登って来る人たちが、列になっているのが見える。 こうして皆、一歩一歩登って来る。 クルマユリ。 濃い緑の中に、艶やかなオレンジ色がひときわ映える。鮮やか。 どっさり咲いている。 花の写真を撮りながらも、私の足元はふらふらだった。 足取りが重い。 足が前に進まない。 自分の心臓の鼓動がやけに激しい。 頭が、ずきずき、ずきずき、痛む。 なかなかペースが上がらず、歩が進まない私を訝って、前を行く友人Kが大丈夫か、と声をかける。 大丈夫、と力なく答えながらも、これは大丈夫じゃないな、と感じていた。 もしかしたら、今日はここまでで、白馬岳の頂上を踏むことは出来ないのかもしれない。 小雪渓をトラバースする手前の葱平(ねぶかっぴら)まで上り切ったところで、岩に腰かけて休憩を取った。 Kが、私が持っている水を見せて、と言うので、背負っていたザックの中からハイドレーションのパックを取り出して見せる。 2L持っていた水の、半分は消費していた。 だから、水分を摂っていなかったわけではなかったのだけれど。 Kは脱水症状だね、と言い、まだ今の段階なら間に合うからと、Kが持っていたスポーツドリンクを私にがぶがぶ飲ませた。 同時に、黒砂糖のかけらと、硫黄の匂いがする塩を分けてくれた。 そして持っていた速乾タオルを湧水で濡らし、私の首に巻いてくれた。 これらが脱水症状に陥りかけていた私を、なんとか正常状態の方へ引き戻した。 暑い時の長時間運動時の水分補給は、やはり水だけでは駄目なのだと思い知らされた。 Kは私のザックの中身も点検し、ハイドレーションと食料を残して、雨具、コンパクトジャケット等を全部自分のザックに移し、代わりに背負ってくれた。 30分以上も休憩しただろうか、Kに「どうする?行ける?」と訊かれて、「行く」と答えた。 まだもう少し、歩ける気がした。 この先には小雪渓と岩場が待っている。
by bongsenxanh
| 2013-07-28 13:58
| -山
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by bongsenxanh
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