やっぱりV.グリゴーロ、良かったわ!!! 最高だったわ!!! 私好みの声と演技だ!(容姿は違う)と思った通りでした。 Bartlett Sherの演出も、あぁ、Bartだなぁ…って納得するものでした。 それにしても相変わらず日本語表記が「シャー」になっているのが気になる。「シェー(ル)」よ。 さて。追記。 この作品の予告映像を観た時に、グリゴーロの歌声を聴いた瞬間、「あ!ルチアーノと似てる!!!」と思った。 声が、声質が、ということでなく(もちろんそれもあるけれど)、テイストが、歌から伝わってくるものが、ルチアーノの歌を聴いていた時を彷彿とさせたのだ。 その後、グリゴーロが"パヴァロッティの再来"とか"新しきテノールの大スター"とか言われていることを遅まきながら知った。 やはり。 とても伸びやかに、小細工なしに高らかに歌い上げる感じとか、かなり声を張り上げ気味に高音を出す発声とか(あれ、かなり喉に負担がかかっていると思うなぁ)、 これぞイタリアン・テノール!!! とでも言いたくなるような歌唱。 聴けばすぐに彼だとわかる特徴(癖)のある歌唱なので、きっと好き嫌いが大きく分かれる歌声だと思う。 私は、大好きだった。 「(リハーサルで)ホフマンを演じて歌っている時に、no,no,それはイタリアン・モード過ぎるよ、もっと抑えて!って注意されることがある。自分では抑えているつもりなんだけど、つい、イタリアンで情熱的になっちゃうんだよね」 みたいなことを言っていたけれど、本当にその言葉通りで、フランス語でホフマンを歌っていても(ホフマンはドイツ・ロマン派の詩人・作家ホフマンがモデルなので、ドイツ人か)、グリゴーロの演じるそれは明らかにイタリア~ノ!だった。 機械人形に恋し、夢破れる、滑稽で愚かででもチャーミングなホフマンも、歌姫アントニアを純粋に愛するホフマンも、高級娼婦のジュリエッタに呆気なく弄ばれちゃう他愛もないホフマンも、すべて愛すべきイタリア~ノのグリゴーロだった。 ただ、抑制するところはきちんと抑制している。 Bartはこの『ホフマン物語』にカフカに感じられる哲学も盛り込んだ、と語っていたけれど、そういった苦悩や苦悶も色濃く表現されていたと思う。 あと、グリゴーロの歌は、きちんと歌詞が聴こえるなぁ…とも。 大学の第二外国語でしかフランス語をやっていないへなちょこの私にも、グリゴーロのフランス語は音がしっかり聴き取れた。 『クラインザックの物語』のところ、グリゴーロのチャーミングさがしっかり出ていたなぁ。 デボラもやや辟易しているかのような受け答えで、最後には「残念!もう時間切れよ!」みたいな感じでインタビューを打ち切り、グリゴーロと唇の端だけでキスをして、追い払っていた(笑) 追い払った後にフゥーーー!That's enough!!!みたいな感じで肩をすくめるようなジェスチャーもしていたし。 面白いなぁ、グリゴーロ。憎めないなぁ。 4月の5日と10日に来日リサイタルをするのだけど、東京だけなのが残念。 グリゴーロ以外には、ミューズ/ニクラウスを演じたケイト・リンジーが素晴らしかった。 もともとの見た目が非常に中性的で、クールで理知的なのだけど、それに加えてとっても芸達者で、1幕でオランピアに惚れたホフマンを揶揄して歌うシーンでは、人形を使って振りを入れて歌うのも巧かった! 終幕で、ミューズの姿に戻ってホフマンを優しく抱きとめるのも、包容力のある歌声と演技が良かった。 4役の悪役をこなすバリトンのトマス・ハンプソンも堂に入った悪役振り。 バリトンの響きも貫録たっぷり。 ジュリエッタをダイヤモンドで釣るシーンの歌唱は惚れ惚れする響きだった。 他に、オランピアを歌った新人エリン・モーリーも凄かった! あのコロラトゥーラの最大の見せ場(聴かせ場)、『生垣には、小鳥たち』のハイトーン、スコア以上の高音をばんばん出していた。 機械人形のぜんまい仕掛けの独特の動きと発声がきちんと連動しているところは天晴れ! 幕間インタビューでは、自分でも高音のことを「音とは言えないような金切り声」と言っていたけれど、いや、でもあれだけ正確に、あの人の業とは思えない音を出せるのは凄い。 私、オランピアのこのクプレは、森摩季さんの歌うものがとても好きだったのだけれど、いやはや、人の個性によって、それぞれ違った色彩を聴かせてくれるものです。 アントニアのヒブラ・ゲルツマーヴァもそれは素晴らしいソプラノだったけれど…(彼女、チャイコ国際コンクールで"グランプリ"を獲った天才だそう。グランプリって、各部門通しての優勝者の中からのたった一人。あと私の知る中ではピアニストのダニール・トリフォノフくらい?)いや、声だけなら本当に、まさに、プリマ・ドンナに相応しいアントニアだったけれど。 あのずどーーーん!とした体形は何とかならないものだろうか…。 あの体だからこそ、あの声が出るのだと言われればそれまでかもしれないけれど。 アントニア、薄幸の、瀕死の、歌姫なのだけれど…あの体型ではとても瀕死に見えない。 健康そのもので溌剌としていそう。 以前は、オペラ歌手、それもソプラノとなれば、太っていても当たり前、みたいなところがあったけれど、最近では容姿もスリムで美しい歌手が増えてきているので…もう少し努力してくれると嬉しいなぁ。 ともあれ、Bartの創り出す妖しくも幻想的な世界と、グリゴーロ演じるホフマンをたっぷり堪能できたプロダクションだった。 これ、DVD化してくれないかしら。
by bongsenxanh
| 2015-03-16 00:56
| 観劇レビュ NY '14/'15
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by bongsenxanh
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