行く前にディスカウント情報をチェックした時は、ディスカウントもあるみたいだったし、そこそこTKTSに売り出しも出ている様子だったので、日本にいる間にはチケットを買っておかなかった。 他にもっと観たい作品(『The King and I』とか『Into The Woods』とか)があったので、そちらを優先させて後回しにしたのもあり。 事前に買うとその分chargeがかかるので(だいたい$10くらい)、この超円安の時には少しでもsaveしたかったのもあり。 そして現地に着いて、3日目辺りになってようやくBox Officeへ行った時には、土日は何もディスカウントなし、そもそも既に土日のチケットは売り切れ、という状況だった。 しまった、openからまだ2週間経っていない新作(revivalだけど)の、土日公演をなめていた。 さぁ、どうしよう? でも、ここであきらめたりはしない。 この時点で、他に代替として観たい作品はないし(『Hedwig』は日曜公演なし、『Hamilton』はlotteryに賭けるしかないけれど、勝率は低い)、日曜日のお昼を劇場に行かずに過ごすということもしたくない。 こんな風にチケットが売り切れで手に入らなくても、最後に残されたチケット入手方法があるのです。 それがキャンセル待ち。 どの作品もどの公演も、公演関係者(出演者とか制作陣の関係者)向けにholdしてあるhouse seatというのがあって、これが残っていると公演開始直前にキャンセル待ちのお客さんに放出する、ということがあるのです。 あと、公演関係者ではなくても、subscriber(劇場や団体の会員)が押さえていたseatをキャンセルしたり。 これが回って来ることがあるのがキャンセル待ち。 たいてい公演時間の2時間前にBox Officeで売り出されます(たまにTKTSに回ることもあるよう)。 というわけでキャンセル狙いで待ってみる。 私は過去に、ものすごくチケットが売れている時の『Billy Elliot』や、preview中でopen間近だった『South Pacific』で、キャンセル待ちしてチケットを入手している。 早めに並んで待っていれば、結構可能性はある。 Box Officeでキャンセル待ちのことを確認して、Box Office前のロビー・スペースで待っていていいか訊いて(すんごく冷え込んでいて気温が2、3℃とかそんなものだったので、外で待つのは厳しかった)、キャンセル待ち売り出しの40分前くらいから待っていた。 出演者が次々に出勤してくる(Stage doorから入らず、正面入口から入って来る人が結構いる)のや、掃除係の兄さんが正面ドアにスプレーをかけてガラスを拭いている(結構アバウトで拭き筋が残っている)のを横目に見ながら待っていると。 一組のご夫婦らしき方たちが入って来て、Box Officeで何か尋ねていた。 あ、この人たちもキャンセル待ちなのかな、と思ってぼ――っと見ていたら。 そのご夫婦が私の方を指して"Waiting for? That lady?"とか言っている。 なんだろう?と思っていたら、そのご夫君の方が私に話しかけてきた。 自分たちは今日のマチネのチケットを持っているが、1枚余ってしまった、良かったらこれを譲れないだろうか、と。 え?そうなの?それは願ってもない話! 今日これからの公演?という私に、"I'll show you where the seat is."と、ご夫君はBox Office脇の座席表のところへ一緒に行き、ここの席だよ、と教えてくれた。 席はオーケストラ席で、なかなか観やすそうな8席目辺り、ただし一番端の、下手したら観切れそうな席だった。 Box Officeの係の人に確認したら(何しろ目の前にいるので)、観切れではないと言う。 ご夫君は、この席は$89のものなんだけど、$50で譲るよ、と仰った。 それはありがたい! 売り切れで手に入らなかったチケットが、端席と言えど手に入るのだ。 しかも、良心的なディスカウントで。 しかし。 ここで私はハタ!と気がついた。 私、cashを持っていないかもしれない。 NYでは、割とどこでもcardが使えるし、その方がレートもいいので(外国為替の銀行手数料を取られない分)、私はあまりcashを持ち歩かない。 この時も$50というまとまった(まとまっているのか?)cashを持っている自信がなかった。 ご夫君に、「あー…私、でも、cashを持っていないかもしれない。cardで買おうと思っていたから…」と言うと、彼は笑って、「うーん、すまないけど、僕はcardは受け付けられないなぁ」と仰った。 それはそうだ。 でも、そこで、もしかしたら多少は持っていたかも…と思い、「ちょっと、ちょっと待って!」と言って、自分の財布をごそごそと開いてみた。 果たして私のお財布の札入れのところには、$50には届かない、$45だけが辛うじて入っていた。 lotteryに挑戦するための$20は2枚、入れておいた記憶があったのだ(lotteryはcash onlyのことが多いため)。 ご夫君に「…これだけしか持ってない…」と言って、その$45を見せたら、彼は笑いながら、「うん、それでいいよ」と言ってくれ、私にチケットを手渡してくれたのだった。 あぁ、神様!チケットの神様か、劇場の神様!感謝します! そして、こんな貧乏なマッチ売りの少女みたいなアジアン・ガールに心優しくチケットを譲ってくれたご夫妻にも。 見ると、ご夫君はモンゴロイドの血が混ざっているような顔立ちで、彼の方から「僕は日系の三世なんだよ。僕の祖母が日本から渡って来たpicture brideでね」と教えてくれた。 日本語は全然知らない、と言う彼は、「イッセイ、ニセイ、サンセイ」という単語だけは知っていた。 彼らはNYに住んでいる娘さんと3人で観劇予定だったそうなのだが、娘さんの都合が悪くなってしまって、そのチケットをキャンセル出来ないかとBox Officeに来たそうだ。 というわけで、チケットを譲って頂き、彼らと横に3人で並んでの観劇となった。 事前にチケットが入手出来なくても、キャンセル待ちに並んで待っていると、時にこんな奇跡も起こる。 この日は、本当に何かが、誰かが、見ていてくれた日だったと思う。 これで、夜の『Hamilton』のlotteryが当たっていれば最高についていたのだけど。 流石にそこまでは、神様も大盤振る舞いはしてくれなかった。
by bongsenxanh
| 2015-04-09 06:43
| 観劇周辺
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Comments(2)
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by
tomotomo1202
at 2015-04-09 07:41
朝から感動。
小説のような出来事が起こるものなのですねえ・・しみじみ。 出会いに感謝ですね^^ 運を持ってるこの観劇、の続き楽しみにしてまする!
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by
bongsenxanh at 2015-04-10 06:46
♪ともきちさん
いやいや…感動なんて言って頂くと面映ゆいのですが。 とにかく何かがついていたな、と。 チケットって基本的に払い戻しが出来ないんですよ。 だからあのご夫妻も多分Box Officeで払い戻せないと言われて、誰かに譲渡出来ないと困る!という状況で、そこにちょうど私がいたんだろう、と思うのですが。 偶然にそのタイミングで出会えたことが、本当に幸運でした^^
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by bongsenxanh
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