葛野盛衰記
観劇記録がなかなか進まなかったのは、実はこの本を貪り読んでいたこともあり。 森谷明子さんの『葛野盛衰記』。 夏になると、森谷さんの平安もの、がっつり読みたい気分になる。 『異本源氏物語』みたいなものとは少し趣が異なり、"平安京"という地―人が集まりその欲望や怨念が渦巻く場―を、正面に据えて描いた一大叙事詩。 平安遷都を行った桓武天皇がまだ日の当たらない皇子だった時代から、その末裔である平家が興隆し、そしてまた滅亡していくまでを描いている。 とにかく、森谷さんの、壮大な物語を紡ぎ出し、大きなうねりと共に動かす筆力に圧倒される。 『異本源氏物語』からの三部作でも吃驚させられたけれど、それともまた風合いが異なる。 この人の物語を読み解く力と、同時に自分で物語を編むその泉はどうなっているんだろう? とにかくずぶずぶと、深い底なしの沼に絡め取られるように、無我夢中で読んだ。 大河の『平清盛』を観ていた時にも感じたことだけれど、私はやはり、あの平家興亡前後の時代に疎い。 こんなにも私は日本史を知らなかったんだと思い知らされるのと同時に、「知らないことの面白さ」を存分に味わった。 知らないからこそ、新たな知識を得るのがこんなにも楽しい。 平城京から長岡京、そして平安京遷都までの経緯も、そこに多治比氏や秦氏といった古くからの一族が関わり暗躍していたことも、何もかもが新鮮で興味深かった。 平城天皇や藤原薬子といった人々が平安京から逃れようと画策した――という辺りのことなんて、無知同然だったので、まるで小学生に戻って歴史の本を紐解いている様な気分さえした。 最後の常盤のくだりは、ちょっとトンデモの香りもしたけれど。 でもこれは、あくまでもフィクションなので。 万人にお薦めの本ではないし、最初、少しとっつきにくいところもあるかとは思うのだけれど、興味を引かれた方はぜひ。
by bongsenxanh
| 2015-08-24 21:16
| 本
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by bongsenxanh
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