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『TRUTH』―ニュースの真相
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こちらの映画を観てまいりました。
何かもう、私ごときがごちゃごちゃ感想を言うのもおこがましいくらい…圧倒的な力を持つ映画でした。
凄かった。
これ、間違いなく、今年のMUST SEE映画の内の1本だと思う。
最近、映画のパンフレットなんて全然買わないのに、思わずこれは買っちまったわ。
あちこちの映画評で同じく報道を扱った問題作『SPOTLIGHT』と並び評されることが多い様だけれど、それも頷ける。
報道を扱った二作がこうして同じ年に公開されて(米国公開はどちらも2015年、日本公開が2016年)話題になるというのは、果たして偶然なのか、はたまた何か世相を反映したものなのか…。

2004年9月、米国大統領選真っ只中。
ジョージ・ブッシュは大統領2期目へ向けて選挙戦を繰り広げていた。
そこへ米国最大ネットワーク放送局であるCBSが一大スクープをぶち上げた。
ブッシュの軍役時代(=ベトナム戦争当時)の、大物政治家である父親の威を借りたコネ入隊&職務怠慢(兵役逃れ)疑惑である。
放送当初は現役大統領の大スクープとしてセンセーションを巻き起こしたが、それはすぐに別のスキャンダルに変わった。
決定的証拠として取り上げた文書に対して偽造疑惑が持ち上がったのだ。
果たしてその真相は…そして、それを取り上げて番組にしたプロデューサー(=ケイト・ブランシェット)とアンカーマン(=ロバート・レッドフォード)の辿る道は…。

最初、アイメイクぐりぐりのケイト様(もう、敬称をつけてお呼びするわよ)を観た時には、「あれ?」と思ったのだけれど、あのパンダメイクになりかけのシャドウが際立つメイクも、敏腕プロデューサーで、かなりBitchな印象のあるメアリー・メイプスという役を表現する一つの道具だったのだと思う。
そして顔中皺だらけ、とにかくしわしわしわしわのロバート・レッドフォードに「あぁぁ、ロバート、本当におじいちゃんになって…」と、何とも言えない感慨を覚えたけれど(リアルタイムではないけれど、『Out Of Africa』(邦題:愛と哀しみの果て)を観たりして、高校時代から憧れの人だったのです)。
この二人の迫真の演技が、この映画の大半を占めていたと思う――とりわけケイトの演技が。
最後の最後に来る、ケイトの独白シーンは凄過ぎて鳥肌が立ったし、その後にケイトが言う"I am what I am."(「これが私よ」という字幕がつけられていた様な)という台詞は、メアリー・メイプスのものでもあったろうし、また同時に演じるケイトのものでもあったと感じた。
(ニュースソースの裏取りは、正直詰めが甘過ぎる、とも思ったけれど)
こちら、参考映像。



思い起こしてみれば、この事件があった2004年は、ちょうど私もNYへ行っていて("Wicked"がトニーを獲った年ですよ)、それも10月でまさに大統領選真っ只中だった。街の至るところに"VOTE OR DIE"という投票を呼び掛ける看板が溢れていた。
劇場に通うのにいっぱいいっぱいで(それは今も変わらない)、NYが、米国が、こんなスクープの渦中だったことも知らずにいたけれど。
この映画が、また話題騒然のヒラリー・クリントンVSドナルド・トランプの大統領選に先駆けて公開されたことは、全く偶然ではないのだろう。
そして、この事件について、きちんと俯瞰&客観的に考えて、結果的には誰が一番得をしたのか。
結局、この一連の偽造文書及び疑惑のリークという計画を企てた大元は誰だったのか。
そこを見極める必要があると思う。
蛇足ながら付け加えておくと、この事件の後に、皮肉と言おうか、ジョージ・ブッシュは再選を果たしている。

メアリー率いる報道チームの誰かが、何かの折に「なぜそんなことをするのか?」と問いかけられた時に、"That’s what we do"と答えていたのも記憶に残った。
「仕事だから」という字幕だったけれど、これはちょっと違うかな、と思った。
字幕は松浦美奈さんだった。

それにしてもこの映画が『SPOTLIGHT』と同じくミニシアター系の扱いって、どうしたことでしょう。
観客動員が見込めない、ということなのでしょうけれど。
こういうのをきちんと全国ロードショウ出来なくて、毒にも薬にもならないちゃらちゃらしたラブコメor漫画の実写化邦画ばっかり垂れ流している大手シネコンが席巻している日本&観客って、実はものすごくやばいんじゃないだろうか。
と、小さく強く、世界の片隅でつぶやいてみたりするのでした。

P.S.映画の中で何度か出てくるテレビ(機器そのもの)が、SONY製で、それも今はなき(もしかしたら今も現役で使われているご家庭もある?)トリニトロンのブラウン管で、非常に懐かしいものに再会したような気分になりました。
  そう言えば、メアリーが息子にねだられたクリスマス・ギフトのハンディカム・カメラを包んでいるシーンで使われていたのもSONYのハンディカムだったなぁ。
  大学を卒業して最初に入った会社がSの字だったので、個人的にちょっと懐かしくて。
  それに対して、メアリーに曰くつきの文書を渡すビル・バーケットの自宅に置かれていたテレビはNEC製で、こちらもちょっと「おっ?」と思った。
  この辺り、道具係さんは意図して用意したのでしょうかね。
by bongsenxanh | 2016-08-31 00:45 | 映画 | Comments(0)


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