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『パレード』―カーテンコール、南部の人々etc.
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未だ、毎日の様に"This Is Not Over Yet"を熱唱中です。
ひとまずVivian Beaumontの看板をup。
あ、これ、Brentのサイン入りなんだ、いいなぁ~。
このいかにもLCTなディザインのPlaybillも欲しかったんだよなぁ。

では、大千秋楽のカーテンコールや、主演二人以外のキャストのことなど。



さて、東京、大阪と回って来て、名古屋公演は大千秋楽。
そのカーテンコール。
石丸の幹ちゃんの挨拶については、先の観劇レビュにも書いた通りですが。
その幹ちゃんが挨拶した後に、幕切れのルシールとしての演技からカーテンコールまで、ずっと目を潤ませてすすり泣いていた堀内敬子ちゃんの方を振り返って、「堀内敬子からもご挨拶を…」と、幹ちゃんが彼女の背中を優しく押して舞台上で一歩前に出したのが、一観客ながらぐっと胸が熱くなった。
四季で『美女と野獣』で共演していた頃から(あの頃、二人が主演での共演が多かった)仲の良さそうな二人だったけれど、退団後は全然共演がなくて、それが不思議なくらいだった。
敬子ちゃんはそもそも、退団後しばらくしてからはTVや映画の仕事が多くなって、舞台に立つ機会が少なくなっていたし。
その二人が17年振りに舞台共演というのは、本当に感慨深かった。
背中を押された敬子ちゃんは、「この作品では、お稽古場で、出演する俳優一人ひとりが全員、前向きにお稽古に励んでいて、全員本当に真剣にお稽古に取り組んでいて、そんな中でこの舞台に立つチャンスを頂いたことを嬉しく思いますし、誇りに思います」みたいな(うろ覚え)挨拶をしていた。
一人残らず、ものすごく真剣に稽古していた、というところをとりわけ強調して語っていたのが印象に残った。

そして更に、演出の森氏が出て来て、「ぜひ、再演を。必ず再演を」と仰っていたのが、とても嬉しかったのだけど(再演期待のお客さんは多いですよね)。
「今回のこのキャストのメンバーが一人も欠けることなく」と言っていたのには、若干、同意しかねて。
私も、あの鳥肌が立つような歌声を聴かせてくれるアンサンブルは誰ひとりとして欠けて欲しくない。
それは心の底からそう願うのです。
が。
あの知事と新聞記者だけは、どうにかして欲しかったんです。ごめんなさい。
あれだけ歌える実力派アンサンブルを揃えたのに、どうしてよりによってあの二人だけ…!
いや、興行主がホリプロだからってわかってますけれども。
知事は、レオの冤罪の行方を握るキーとなる役だし、2幕でルシールの働きかけによりスタンスが変わっていくという、ルシールの活動や功績を見せる役でもあるので、演技力がとても必要とされる重要な役。
新聞記者もまた、レオの有罪確定へと民衆を煽り立て、レールを敷いていってしまう、キー・パースン。
終幕近くではルシールにレオの指輪を渡すというものすごく大切な使命も担う。
また、新聞記者は歌唱力も伴わなければならない。
歌で聴かせるシーンが多いのだ。
1幕で、レオに不利な証言を集めて記事を書いていくシーンなんかは特に。
だからこそ、あのキャスティングはなかった。
歌唱力のあるアンサンブルの中で、彼の声だけが浮いて、悪目立ちしてしまっていた。

その一方で。
超絶歌上手だったアンサンブルは、やはりサカケン!
坂元健児さんですね。
坂元くん、私は彼が四季の『ライオン・キング』初演でシンバ・デビューした当時、彼の歌声に狂った歴があるのだけれど(笑)、もー、あれから20年近くの歳月が流れて、ますます歌声に磨きがかかって。
今回、もちろん彼は役名のある役ではあったのだけど(こちらもレオを陥れるキーとなる黒人役)、それでも彼がアンサンブルの内の一人となるシーンも多くて、彼ほどの歌唱力がある俳優を一アンサンブルとして使えるプロダクションというのは何て贅沢なんだろう…と思わされた。
坂元くんがソロで歌うパートはゴスペルっぽいものがあり、R&Bっぽいものがあり、それもア・カペラに近い状態のものもあって、坂元くんの歌唱力の高さ、声量の豊かさがいかんなく発揮され、それをあますところなく味わえるものだった。
かなり悪い役ではあるのだけれどね、それでも彼の歌声に対して、「はは―――…」ってひれ伏して崇めたくなりましたわ。
余談だけれど、このプロダクションで黒人役を演じる役者さんは皆、顔面だけを不自然に褐色で塗ったメイクを施していて(首筋などは塗っておらず、地肌のまま)。
あれは、"黒人である"という有色による差別を際立たせるための演出の一つだったか、と。

もう一人。
小野田龍之介くん。
彼もまた、メアリー(強姦殺人の被害者)の友人役という、大きくはないけれどキーとなる役で。
でも、もちろん主役級ではなく。
彼がアンサンブルの一人であるというのは、やはり贅沢で。
幕開け、赤-オレンジ色の照明に照らされたホリゾントに浮かび上がる大木の横に一人立って、南部ジョージアの誇りを歌っていたのは彼でしたっけね。
本当にソロがよく映える素晴らしい歌声だった。

他にもアンサンブルの中には石川禅さん(禅さんは役名のある悪徳検事ではあるけれど)、安崎求さん、宮川浩さん等がいらっしゃって、本当に何なの、この贅沢過ぎるアンサンブルは!と感じさせられ。
なかなかここまでハイレヴェルなプロダクションは存在し得ないのです。

森氏のカーテンコール挨拶に戻るけれど、ぜひとも、このアンサンブルのままで再演を。
知事と新聞記者を刷新して、パワーアップした舞台を期待してやまない。

最後に。
"This Is Not Over Yet"をヘヴィ・ローテーションしていて、やはり原詩とメロディが結びついた歌の力は強いな、と。
歌詞とメロディラインが違和感なくぴったりフィットしていて、相乗効果がある。
レオのソロにルシールの声が被さって来て"Yes, Leo there is hope!"って歌い出すところからが凄いんです。
二人が声を重ねて

♪You shouldn't underestimate
 Lucile and Leo Frank!
 'Cause this is not over yet!!


って歌い上げるフレーズが素晴らしいのだけど、Lucile and Leo Frank!
って、人の名前をフルネームで歌にして映えるのって(特に夫婦だから、女性&男性名を並べてフルネーム)、やはり西ヨーロッパ言語の特徴の様な気がする。
日本語だとこういう風にはいかないもの。
今回の日本公演の日本語歌詞がどんな風になっていたかは、舞台で一度聴いただけなのでもう記憶にないけれど。
あ、1999年トニー賞授賞式の時のパフォーマンスがあったので、上げておきます。
ブレント・カーヴァーとキャロリー・カーメロの歌唱が素晴らしいです。
(ブレントは『蜘蛛女のキス』のモリーナ役でもトニー賞に登場している俳優さんです)
しかもこれ、日本語字幕付です。
しかし、underestimateを「見損なってはいけない」って訳しているのは誤訳だな。
「見くびってはいけない」ですよ。
これ見てつくづく思ったのは、トニー賞授賞式、WOWWOWなんかではなく、またBSに戻してほしいな、ということ。



Thu Evening Jun.15 2017 愛知県芸術劇場大ホール
by bongsenxanh | 2017-07-05 00:12 | 観劇レビュ 国内etc. | Comments(0)


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