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『グレート・ギャツビー』―日生劇場
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昨日、土曜日にこちらを観て来たのです、日生劇場で。
開幕週に観られたというのは、なかなか幸せなことではないかと。
「チケット余りそうだけど要る~?」と声をかけてくれた友人、ありがとう。

詳しくは明日、このトピックに続けて書きますが。
端的に言うと、"ヨシオとマリオが出ている宝塚のレビュー"って感じ。
ミュージカルの骨格があるところまで仕上がっているかと言うと…んーーー。
ヅカ・メイクをしているヨシオが笑えます(いえ、カッコいいのでしょうけど!)
ただ、ヨシオがこんな"色気のある大人の男"の役をこなせるところまで成長してきたということに、何だか感慨深いものもあり(オカンか、私は)。
初日の舞台挨拶で、演出の小池氏も同じ様なことを述べられて涙されたとか。
ヨシオファンなら必見であることは間違いないです(いえ、私はそんな熱烈ファンではありませんが)
ひとまず、PVも上がっているのでそちらをどうぞ。



というわけで、遅れに遅れていましたが、ようやくつづきを。



まず、この作品の上演発表があった去年から(『ジャージー・ボーイズ』をやっていた頃でしたっけ?それとも『エリザベート』の頃でしたっけ?)、ヨシオ&マリオ主演なら観よう、小池演出だしね、とは思っていて、でも作品に関する情報は全く追っていなくて(最近すっかりズボラで申し訳ない)。
だから、頭の片隅で「あれ?小池演出で『グレート・ギャツビー』って、昔々、宝塚の雪組でやっていた『華麗なるギャツビー』ともしかして同じじゃない?」ってちらっとは思っていたのですが、公演に先駆けて、その宝塚でギャツビーを演じた杜けあきさんと瀬名じゅんさんとヨシオの鼎談なんてものが公式webにupされていたことも全然気づかずにいました。
それくらい、なーんにも情報を入れていなかったということで(笑)
やはり、小池演出のリメイク、という位置づけなわけですね。
いや、プロダクションとキャストを刷新しての再演、という位置づけの方が近いのか?
で、なぜヅカファンでもない、むしろヅカアレルギーを持っているくらいの私が宝塚版のことを知っていたかと言えば、雪組で杜けあきさん&二番手一路真輝さんで初演された時の舞台映像を、たまたまNHKのBS2で観て記憶に残っていたからです。
舞台にはまり始めたばかりの子どもの頃のことで、宝塚に苦手意識があったのに(今でもある)その作品の印象はとても鮮烈で、特にテーマ曲とも言える"朝日の昇る前に"は、一度聴いただけなのにメロディラインと歌詞まで覚えているくらい(同じフレーズの繰り返しが多いのと"いつ果てるとも知れぬ泥沼を僕は這いつくばった"という歌詞が強烈で)記憶に残っていて。
つまり、それだけとても良く出来た作品だったということなのです、今にして思えば。
その当時は子どもだったのでよくわかっていなかったけれど。
で、そんな記憶と、後はレオナルド・ディカプリオの映画の記憶とを予備知識として観た今作。

作りは、本当にその記憶に残っていた宝塚版と寸分違わぬもので、あぁ、それだけ小池さんはこの作品に確立された自分のイメージやプランを持っていて、それを忠実に舞台へと落とし込んでいるのだろうな、だから再演しても基本の骨格は変わらないんだろうな…と思いました。
それこそね、ギャツビーがデイジーを待つ堤のセットも、フィナーレでギャツビーが決めの曲を歌い出す前の日記のエピソードや少年ギャツビーが登場する演出も、全く同じだったのです。
ギャツビーの立ち位置も少年ギャツビーの立ち位置も、全く同じなくらい。
宝塚の雪組初演は1991年のことなので、もう約26年前のことですね(26年…!!)
あ、ちなみに少年ギャツビーで石川新太くんが出て来たのでちょっとびっくりしました。
『ジャージー・ボーイズ』の時にいいキャラしているなぁ…と思っていたのですが、今作に出演しているということは情報チェックせずにいたので、最後の最後にこんな重要な役で(だってタイトル・ロール&ヨシオの少年時代の役なんですよ!)出て来るとは思っていなかったのです。
石川くん、これから急成長してくるのかな。

で、それだけ小池さんの思い入れの強い作品なわけですが。
冒頭でも書いた通り、"ヨシオとマリオが出ている宝塚のレビュー"という雰囲気で、舞台の構成は本当に宝塚っぽい感じ、ちょっとレトロな…と言うか古臭いと言うか…登場人物たちがちょちょっとエピソードを語って小芝居をしては歌が始まり、歌が終わるとまた芝居、という感じで、曲と曲とがつながって流れを作って、相関し合って物語を運んでいく…というミュージカルの醍醐味みたいなものはあまり生み出せない構成だと感じました。
何て言うか、有機的でダイナミックな物語のうねりみたいなものは感じられないな、と。
ブツ切りなんです、ひとつひとつのナンバーも、シーンも。
あと、そのナンバー、これと言って耳に残る様な強力なキラー・チューンがなく。
前述の"朝日の昇る前に"に変わってギャツビーが歌うキメ曲は"夜明けの約束"なのですが(これ、ヨシオがトニー賞コンサートの時にも歌っていましたね)、とても音の取り難い難曲ではあるものの、あまり耳に残らなく…。
この作品の顔となる曲としてはかなり弱いかな、と思いました。
ヨシオはこれまでにないくらい良い状態の喉で、良い声でバンバン歌っているのですが、それでもこの曲は胸にズキューーーン!と来る、というところまでは及ばないのです。
今回の刷新で楽曲を担当したのは米国の作曲家リチャード・オベラッカー。
先日、3月末のNYで、私が観たいと思っていて、ぎりぎりopenに間に合わなくて見逃してしまった新作『BANDSTAND』(今年のトニー賞ノミネート作品に入っていますよー)の楽曲を担当している作曲家です。
彼はシルク・ドゥ・ソレイユのドラリオンの作曲&指揮等を担当していた人ですね。
あと、数々のミュージカル作品でもタクトを振って来たみたいです。

舞台構成、装置の話に戻ると、あの"神の目"をフィーチュァした舞台セットは、なかなか斬新でした。
潰れてしまった眼科医の看板に描かれている眼鏡をかけた目ですね。
ギャツビーやデイジー、デイジーの夫トム・ブキャナンを冷静に見つめている目。
それが舞台の終盤、クライマックスとなるシーンでも効果的に使われています。
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このセットがそう。
このギャツビーの回想シーンと言うか、深層心理に入っていくかの様なシーンは、同じく小池演出&ヨシオ主演の『モーツァルト!』"謎解きゲーム"のシーンを彷彿とさせました。
小池さんはこういう、人間の心の奥底に迫っていく描写や、を描き出すのが巧いですね。

えーと、あと、ヨシオの歌&演技&存在感は本当に申し分なかったのですが(と言うか私、今回またヨシオを見直しました。まだまだ進化するんだ、ヨシオ。凄い…!と)、その相手役となるデイジーがあれっていうのは、どういうことなのでしょう?
見た目は素晴らしく可愛らしいのですが。
歌が……聴くに堪えないほどの歌で……。
よくあれでヨシオとデュエットなんてしちゃうなぁ。
ヅカ出身の女優さんて、どうしてこうも歌唱力に期待が出来ないのですか?
可愛らしくて若く見えれば、歌も演技もどうでもいいのですか?
『エリザベート』の時のあの破壊力シシィと言い(誰とは申しません。もう誰もが知っているとは思いますが)、今回のデイジーと言い、東宝&小池さんはヅカ出身ヒロインにはか歌唱力なんて微塵も求めていないのだということがよくわかりました。
シアターゴーアーの友人とそのことについて話をしたら、「小池さんは女性キャストには歌唱力よりもビジュアルの美しさを求めたのだ」と結論を出してくれました。
ひどく納得致しました。そういうことなんですね。
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こういうヨシオはね、本当に素敵なんですよ。

で、最後にマリオ。
いや、私、もしかしたらヨシオ目当てじゃなくて、実はマリオのためにこの作品観に行ったのではないかとさえ思ったのですけど。
もう、マリオ、とにかくひたすら可愛くて、愛おしかったです(笑)
マリオが演じるニック・キャラウェイは、映画ではトビ―・マグワイアが演じていたあの役で、孤独なギャツビーの唯一の理解者であり、狂言回しとまではいかないけれど語り部であり、この作品の中ではただ一人と言っていいくらいの"良心"を体現する役です。
マリオは、その役を素直で伸びやかに屈託なく演じていました。
歌の聴かせどころが少なかったのが残念と言えば残念。
カーテンコールの時のマリオも、もう途轍もなく可愛くてチャーミングで。
3回目くらいのカーテンコールの最後にデイジーの肩を抱き寄せたヨシオに「僕も…」みたいな感じですり寄って行ったマリオ、ヨシオに連れなく押し戻されていて。
「来んなよ」みたいな感じで(笑)
で、それにもめげず、ヨシオの方に体を傾けて寄って行きつつ、満面の笑みで両腕をお客さんに向けて振るマリオが、壮絶に可愛かったです。
何なの、あの可愛い人は~~~!

というわけで、作品としてはそこまで惹かれないのだけれど(構成や音楽をもう少しブラッシュアップしてくれたらな…)、地方公演で名古屋に来た時にまた観る予定です。
日生劇場、ちょっとチケット・セールス良くないみたいですね。
この日も土曜日マチネ公演なのに、そして開幕週初の週末なのに、1階席にもちらほら空席があったし、リピーター割引とか学生割引とか、いろいろ後発でチケットの優待出していますよね。
小池演出&ヨシオ主演でも、やはり評価の固まる前の新作ではセールスに苦労するのでしょうか。

Sat Matinee May.13 2017 日生劇場
by bongsenxanh | 2017-05-15 00:48 | 観劇レビュ 国内etc. | Comments(0)


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