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Sunday in the Park with George
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まさか、こんな作品がここメトロポリタンにあるとは、思っていませんでした。
ジョルジュ・スーラの『グラン・ジャット島の日曜日の午後』―――の習作です。よ~く見ると、本作よりも点描が粗いですね。本作はシカゴ美術館が所蔵しています。門外不出で、貸し出されることはまずないらしいです。それにしてもこの作品の習作がこういった形で公開されているなんて・・・知りませんでした。大好きな作品なのに。前にもメトロポリタンには来たことがあるというのに、いったい私は何を観ていたのでしょう。
ともあれ、グラン・ジャット島の午後・・・・・・胸がいっぱいになって、思わずよろけそうになりました。なぜそんなにこの作品が好きなのか、それはもう説明しようがありません。好きだから、好きなのです。好きになるって、そういうことですよね。理屈抜きなんです。
ブロードウェイ・ミュージカルで『Sunday in the Park with George』という作品がありました。Sondheim(ソンドハイム)の作品で、とても前衛的で、一般受けする作品ではありませんでしたが、でも限りなく芸術的で、限りなく美しい作品でした。舞台装置も、衣装も、照明も、そして何より音楽が。その作品が、まさにこのグラン・ジャット島の午後にSondheimがインスピレーションを得て、この絵をモチーフにして作り上げたものなのです。この絵をそっくりそのまま舞台の上に再現したかのような作品でした。主演したマンディ・パティンキンとバーナデット・ピータースの歌唱も素晴らしくて。
そういったことも、私がこの作品を好きな一因なのかもしれませんが。
よろよろと展示室の中央に置かれたベンチに腰掛けた私に、声をかけた男性がいました。

「コンニチハ」



この展示室は、あまり人気がないのか(でも印象派の名画がずらりと並んでいるんですけど!)鑑賞者は私一人しかいませんでした。
声をかけてきたのは、展示の監視をしている男性。
そういえば私がこの部屋に入って来たときからじっと見られていたような気がします。
ハテ?私、何か悪いことをしたかしら・・・フラッシュも焚いていないし、三脚も使っていないし、何も違反はしていないはずだけれど・・・といぶかしんで彼の顔を見ていると、少し言葉を探している様子でしたが
「um...umm...ツカレ...タ?」と。
どうやら、私が日本人と見て取って、話しかけるタイミングを窺っていたようです。彼もずっと同じ展示室で立っているだけでは退屈だったのでしょう、おそらく。
「ううん、疲れてないわ、日本語が話せるの?」と英語で返したら、ほんの少し挨拶程度、と。
「疲れていたんじゃなくてね、あの絵が好きなの」と言ってすぅっとグラン・ジャット習作を指差すと、彼は「あぁ、スーラだね」と言うのでした。そして、スーラが好きなら1階にももう一点あるから、ぜひそちらも観て行くといいよ、と。
彼はどうやら日本に興味があるらしく、日本のどこから来たの?とも訊かれ、「アイチ・プリフェクチァ」と答えたのですが、まぁマイナーな県なのでわかるはずもなく、日本の中での位置とトヨタ・カンパニーの本拠地がある県だ、と説明すると「あぁ、トヨタならわかるよ、ビッグ・ビジネスだからね」と。ま、そうよね(笑)
あ、彼は監視員なのでいいのですが、この美術館は日本人旅行者の女の子をカモにしようとする輩のナンパのメッカでもあるので(私も遭ったことがあります)声をかけてくる人は基本的には、無視。
更に「Are you student?」と。ふはは。そう思われているだろうとは思ったけれど(笑)
それも大学ではなくて、中学か高校の(笑)いいのです、若く見えてるということで。私が職業を言ったら、驚いていましたが。
その後も、NYのことや、絵のことなどをしばらく話していたのですが、他の鑑賞者が部屋へ入って来て彼に作品の場所を訊ねたりしていたので、頃合いを見て、バイバイと手を振ってその展示室を後にしました。彼も他の鑑賞者の質問に答えつつ、組んだ腕の先の手でバイバイ、とゼスチャーしたのでした。
監視員の人ってただ見張りに立っているだけだと思っていたのだけれど、彼と話すことでそれだけではなくて、ちゃんと絵を、美術館という場そのものを愛している人もいるんだな・・・と感じて、とってもとっても嬉しくなったのでした。
やっぱり好きです、メトロポリタン美術館。カニグズバーグの『クローディアの秘密』のクローディアのように、私もそれこそ1週間くらいメトロポリタンに泊り込んでみたいです。でも夜はきっととても冷えるんですよね(笑)
by bongsenxanh | 2006-01-05 18:30 | 美術 | Comments(9)
Commented by きっき at 2006-01-06 03:53 x
眠れない夜にbongsenxanhさんのブログを訪ねてみたら、
ほっと心があったまる文章に
やっぱりここで出会うことができて、うれしく拝読しました。
素敵なひと時ですね。。☆
ありがとうございました!そろそろ眠たくなってきましたzzz...
Commented by ともきち at 2006-01-06 19:19 x
他にも反応したい所があるんだけど。
時間がないのでまずここに。

スーラ大好きなの。
下の方のフェルメールも20年来のファンですが。
スーラね、作品自体が少ないでしょ。
これが一番有名ですよね。
いいなあーー習作でも本物を見ることが出来て。
点描画法というのが私、好きなんだわ、元々。
このスーラから日本の岡鹿之助にも行って大好きになりましたの。

ミュージカルがこれから出来たというのもいいお話ですね。うっとり。いい芸術はいい芸術を生むのねーはあー(溜息)
最後がクローディアの秘密というところが素敵過ぎる・・
Commented by bongsenxanh at 2006-01-06 19:25
♪きっきさん、ありがとう~~~☆☆☆
そんなこと言っていただけると私の方こそ嬉しくなってしまいます、ほろり。
その後ぐっすり眠れたでしょうか・・・。

やっぱり一人で旅していると、それだけ声をかけられる頻度も高くなるんですよね(良くも悪くも)。
それで感じのいい人や親切な人、ユーモアのある人と出会えたら、それはとても素敵な旅の蓄積になるわけで。
だからやめられないんですよねー、スナフキン体質が(^^;)

あ、ここでも「ふえ」でいいですよ~。
Commented by bongsenxanh at 2006-01-06 19:36
♪きゃぁ、ともきちさん!たぶんリアルタイムですね?
ともきちさんもスーラお好きですか!
いいですよねぇ!!私も点描に弱いです(笑)あのツブツブを観ると、よろめきを覚えます(笑)なのでモネやカミーユも大好きです。
ひとつひとつの粒はそれぞれ違う色なのに、それを観た人の視覚の中で粒の色が混ざり合って目的とする色が出現するように、計算されているんですよね。凄いなぁ・・・と感心します。
本作も生で間近で観てみたいですよね。
シカゴまで行くしかないか!(笑)

これをモチーフにしたミュージカル、もう10年以上前のことなのですが。
確か日本でも上演されたらしいです(未見)。
草刈民雄さんと鳳蘭さん主演でやったらしいですよー。
(イメージが違い過ぎる!ぷんすか!)
一応、DVDも出ているので(リージョン1なのですが)もしチャンスがあったらぜひぜひ観てほしいです!
本当にこの絵そのままの舞台なんですよ~。

クローディア・・・になりたいと思ったことありませんか?(笑)
私はぜひなりたいんです。あの美術館に泊り込んでみたい!!
大貫妙子さんの歌のように大好きな絵の中に閉じ込められてみたい!!(笑)
Commented by bongsenxanh at 2006-01-09 14:38
『Sunday~』についてちゃんと調べてみたら初演は1984年でした。
10年以上前どころか20年以上前になるんですねー。
・・・って私はいったい何歳から観ているのでしょう(^^;)
日本キャストでの日本上演は1986~87年のようです。
あと、名前が間違ってますね。正しくは草刈正雄さんでした。
草刈という苗字から頭の中でバレリーナの民代さんと混ざったらしいです・・・。
Commented by Rie_bbfan at 2006-01-17 23:20
ふえさん、初めまして!MARIさんのところから飛んできました。
すごく素敵なブログ名ですね。多趣味でいらっしゃるし、ふえさんも素敵な方とお見受けしました。時々覗かせていただきますね!


気になる記事がたくさんあるのですが、一番「おおっ!」と思ったここへ。
『Sunday~』は大好きなミュージカルのひとつで、シカゴ美術館へも2回行きました。あまり時間が取れなかったので、ほぼ『グラン・ジャット島』の絵の前にかじりついていました。シカゴもミュージカル、美術、食(笑)が充実した都会ですよ!ぜひ一度お出かけください。

20年以上前の舞台『(邦題)ジョージの恋人』を観ている私でした。。。(笑)
Commented by bongsenxanh at 2006-01-18 02:15
Rieさん、はじめまして(私もMARIさんのところでお名前は拝見してましたよー)。
来てくださってどうもありがとうございます☆
でもってこちらもありがとうございます!>すごく素敵なブログ名ですね
いやいや・・・日本語って素敵な言語だなぁ・・・と常々思っているのと(ひらがなって美しいんですよねー)、私自身がふらふらゆらゆらしているので(笑)そこからなんとなく(照れ照れ*^^*)

わぁ、Rieさんはシカゴ美術館行かれたんですねー、二度も!
グラン・ジャット本作はきっとうっとりよろよろしちゃうほど素敵でしょうね。
本当にいつかは行って観てみたいです。

そしてそして日本版の『ジョージ~』ご覧になったんですねぇ!!
どんな雰囲気だったんでしょう・・・。
いつかレビュー書いてくださると嬉しいです。
私もRieさんのブログ、覗かせて頂きますね~!!
Commented by Rie_bbfan at 2006-01-18 23:51
>日本語って素敵な言語だなぁ・・・と常々思っているのと

もしかして古典文学なんかもお好きなのかしら?あ。。ふと「ライフログ」を見たら、ミュージカルCD、何て文学的な選択なんでしょう!(笑)

日本版の『ジョージ~』をやった時は、あまりにも高尚な音楽に、気持ちよ~く目を閉じていた方が多数でした(笑)。草刈さん、けっこう頑張っていたんですけどね。
Commented by bongsenxanh at 2006-01-19 02:01
古典文学はそんなに造詣が深くはないのですが(^^;)
ピンポイントでひとつひとつの単語に反応しやすい感じですねー。
ミュージカルは、私はレビューっぽいものとかコメディ的なものより
ある程度ストーリーのうねりがあるものでないとだめなんです。
『CATS』は私にとっては「シエスタ」作品だったりします・・・ストーリーがないと寝ちゃうんですよねー、困ったもんです。
日本のジョージで寝ちゃうのは想像できます。
ソンドハイムの音楽って心地良すぎますからねー。


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