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『DON GIOVANNI』 H.V.カラヤン指揮/ウィーン・フィル
Herbert von Karajan / Mozart : Don Giovanni
Mozart Karajan Battle
0738919039

カラヤン指揮の『ドン・ジョヴァンニ』です。同じモーツァルト作品でも『魔笛』よりもずっとこちらの方が好きです。そしてそして。レヴァイン指揮/メトの『魔笛』を観た翌日にこれを観たので、音の響きの違いが一目(一聴)瞭然でした。メトはメトでもちろん個性のある音なのですが、カラヤン指揮のウィーン・フィルの音はですね...粒立っていて、きらきらしていて、澄んでいて、流麗で...正調管弦楽!という音がします。美しいです。1897年のザルツブルク音楽祭の上演をライヴ録画したもので、カラヤンの人生最後のオペラ指揮となった公演です。ドン・ジョヴァンニを演じるのはSamuel Ramey(サミュエル・レイミー)!! ツェルリーナを演じるKathleen Battle(キャスリーン・バトル)に釣られて買ったのではありますが、同時にレイミーが好き!というのもひとつの購買要因です。一度しか来日していないため、日本では情報が得にくいレイミーですが、私が彼の声を聴いたのは15年くらい前のメトのガラ・コンサート。『ラ・マンチャの男』の"見果てぬ夢"をとっても素敵なバリトンで歌ってらっしゃいました。♪To dream~ The impossible dream~~~ というあの名曲です。バス/バリトンというパート柄、どうしても汚れ役や悪役の多いレイミーですが、この方、そこらのテノールさんよりもよっぽど甘い歌声を持ってらっしゃいます。



その、レイミーのドン・ジョヴァンニ。ダンディです。お素敵です。背が高いですし、この方はすらりとしていてお腹が出ていないので、とっても見栄えのするドン・ジョヴァンニです。いかにも"優男"な感じ。全身真っ白な衣装も、真紅の貴族衣装もよく似合って、いかにも希代の女たらし=ドン・ジョヴァンニという感じ。少しフェロモン足りないかな...もう少しセクシーでもいいかな...?という気もしますが。でも身のこなしも軽やかで颯爽としていて、ドンナ・アンナの家に夜這いをかけに行くとことか、ツェルリーナにさっさとキスしてにやりと笑うところなんて、いかにも女たらし(笑) あ、レイミー、誰かに似ている...と思っていたのですが、気づきました!鹿賀丈史さんにとてもよく似ています。目の彫りの辺りとか、鼻梁とか、にやりと笑う頬や口元とか。立ち姿も似ています。そう思うと声質も同質のものがあるかも...。ともあれ、レイミーのバリトンと演技が冴え渡るこの作品。黒を貴重とした衣装も舞台装置も重厚感があって、同時に繊細さも潜んでいて、舞台を目でも楽しませてくれます。オペラが視覚と聴覚に訴える(もちろん心にも!)総合芸術であるということを、しっかり味わわせてくれます。歌手陣はレイミー以外に、従者レポレッロ役のフェルッチョ・フルラネットが見事!この人がいい喜劇役者振りを見せてくれるからこそ、レイミーのドン・ジョヴァンニが際立つという、好対照なコンビになっています。ドンナ・アンナを演じるアンナ・トモワ-シントウも素晴らしい歌を聴かせてくれるのですが...あぁ、やっぱり舞台である以上は見た目もちょっとは考えてほしいな...なんて贅沢なことを考えたり。だって...お顔も...ごにょごにょ...で、ウエストもビア樽みたいで...ごにょごにょ。レイミーがトモワちゃんのウエストに手を回して手篭めにしようとしたりするのですが、レイミーのウエストの方が細くない?というくらいのどすこいウエストで(^^;) ちょっと無理があるんじゃないかなー、なんて。それを考えたらやっぱり見た目も美しくて歌が歌えるゲオルギューは偉い!と、改めて思いました。アンナ・エルヴィラを演じるユリア・ヴァラディも歌は素晴らしいのですが...。そんな中にあって、バトルのツェルリーナちゃんはまるで一服の清涼剤のようです。白いレースをあしらった黒いドレスがとてもよく映えていて。こんなに可憐で可愛らしくて抜群に歌がうまいのに。素顔はわがままディーヴァだったなんて、信じられないです。騎士長のパータ・プルチュラーゼも朗々とした威厳ある素晴らしい歌声を聴かせてくれます。
そしてこの作品のクライマックス、地獄落ち。ミヒャエル・ハンペ演出のこの地獄落ちシーンがなかなか斬新で良いです。地獄落ちシーンのレイミーがまたいい演技をしているんです!レイミーって希代の歌うたいというだけではなくて、きっちり演じ切る大胆かつ繊細な演技力も素晴らしいオペラ歌手なんですね~!!この地獄落ちシーンでは、ついつい先々月に読んだ『ケッヘル』のあるシーンを思い出してしまいました。プラハの、怖いシーンなんですけど。
『ドン・ジョヴァンニ』を観るのなら、断然このDVDはおすすめです。これぞ王道!という感じの1枚です。あぁ、12月のNYで、レイミー観たさにメトのチケットを買い足してしまいそうです。
by bongsenxanh | 2006-10-03 00:40 | 観劇レビュ 国内etc. | Comments(0)


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