人気ブログランキング | 話題のタグを見る
『愛の妙薬』 J・レヴァイン指揮/メトロポリタン歌劇場
ドニゼッティ:歌劇《愛の妙薬》全曲
レヴァイン(ジェイムズ) メトロポリタン歌劇場管弦楽団 バトル(キャスリーン)
B000087EM5

なんだか小っ恥ずかしいですね、このオペラのタイトル(笑) と言うかまぁ、中身も小っ恥ずかしいのです。なんてったって"バカ丸まる出しのイタリア・オペラ(by 鶴我裕子さん)"ですから。ま、でもやはりオペラはイタリア・オペラがいいのです。小難しいことや人生の深淵などを何にも考えずにただただ全身で味わえば良いのですから。ドニゼッティ作のこのオペラ、プッチーニやモーツァルトやワグナーの作品ほどには知名度が高くないと思いますので、ちらりとあらすじを。
イタリアのとある村。裕福な農場主の娘・アディーナ(Kathleen Battle/キャスリーン・バトル)は若く美しく賢い(ここ、ちょっと突っ込みたくなるんですけど)。読書していたアディーナは村人たちにせがまれて、トリスタンが愛の妙薬を飲むことによってイゾルデの気持ちを射止めた物語を読み聞かせる。そのアディーナに村の若者・ネモリーノ(Luciano Pavarotti/ルチアーノ・パヴァロッティ)は一途に想いを捧げる。が、アディーナはネモリーノなど歯牙にもかけない。ネモリーノはあまりぱっとしない冴えない男なのだ(ルチアーノ、そのお腹はどうなのよ...?)そこへ現れた自信家のベルコーレ軍曹(Juan Pons/ファン・ポンス)に口説かれたアディーナ、さっさとその気になってしまう(本当に賢いの?)更にそこへいんちき薬売りのドゥルカマーラ(Enzo Dara/エンツォ・ダーラ)が現れる。ドゥルカマーラにネモリーノは「アディーナが語っていた愛の妙薬っていうのは本当にあるのか?」と問う。ドゥルカマーラはいんちきなので当然「あるよん♪」と答える。ネモリーノは有り金をはたいて愛の妙薬を買う。が、それは単なるボルドーワイン。酔っ払ったネモリーノはわざとアディーナにつれなく振舞う。するとアディーナはネモリーノへのあてつけに、あと6日でベルコーレ軍曹と結婚する!結婚式を挙げるわ!!と宣言する(だから本当に賢いの?) 果たして、アディーナとネモリーノの仲はどうなるのか...というストーリー。



あらすじを書きながらも既にちょろちょろと突っ込みましたが、本当に突っ込みどころ満載のオペラです。イタリア・オペラってそんなもんです。骨太の練りに練ったストーリーなんてオペラには存在しませんもの。特にこの作品ではドニゼッティの柔らかくて流麗な音楽を楽しむのが王道の楽しみ方だと思います。そのドニゼッティのスコアを歌う歌手たち。このDVDは本当にバトルとルチアーノの歌を楽しむためにあるようなDVDです。特にバトル!!私はもちろんバトル目当てでこのDVDを買ったのですが、買って良かった...!!という思いが胃の腑からじわじわと立ち上ってくるような白眉の歌声を聴かせてくれます。ちょろちょろ突っ込んだように、たぶん私はこのアディーナという役はまったく好きになれないのですが、それでもこの役を歌うバトルの歌声は素晴らしい!それにバトルは演技も感情表現もとっても巧いんですよね。2幕で軍隊へ行くことになったネモリーノの入隊契約書を奪い返して来て「受け取って、これであなたは自由よ」と歌うアリアは、身じろぎもせず、食い入るように全身耳にして聴き入ってしまうくらいの凄い歌唱です。最後のフレーズを歌い終わった後に、思わず画面に向かってBrava!!!と叫んでしまったくらい。あぁ、これを生舞台で聴けた人たちはなんて幸運なんだろう...と嫉妬してしまいました。一方、ルチアーノ(親近感を込めて)。もう...歌声はこんなにいいのに...なんでそのお腹...そのダサイ衣装...と、吹き出したくなってしまうような(笑) あのあり得ない太さのお腹さえなくてもっとスラッとしていたら、ルチアーノは世界中の女性をめろめろにしていたに違いないのに...と思ってしまいます。いや、あの気さくな人柄と歌声だけで十分魅了していますけどね。でもこの冴えない男という役柄のネモリーノにはむしろルチアーノのあのルックスで正解なのかもしれません。歌声の美しさ、心に迫ってくる片想いの切なさを表現する力は文句なしです。ただ、ところどころ粗いところがあるかなー、とも。ちょっと雑に歌ってないかなー、という気がするフレーズがちらほら。しかし、そのバトルとルチアーノの熱唱までもかき消すかのように最後に美味しいところをさらっていくのはドゥルカマーラのダーラ!いんちきドゥルカマーラを演じるダーラはコメディアンとしての役どころを心得て、とても芸達者な芝居をしています。
『椿姫』が悲劇オペラの醍醐味を味わわせてくれる作品なら、これは喜劇オペラの醍醐味をたっぷり味わわせてくれる作品です。オケはいい意味で変わらない、いつも通りのレヴァインのメト・オケです。
by bongsenxanh | 2006-10-16 17:40 | 観劇レビュ 国内etc. | Comments(0)


<< う...うまい...っ!! たわわ >>


AX