はい、またまた『EVITA』です。まだ観るの?という声も聞かれそうですが、いいのです、スコアが好きなのですから。歌える役者さんが揃っていますしね(一部を除いて)。
やはりいつものごとく、マニアックな観劇レビュですので、興味のある方だけどうぞ。 今回の名古屋公演、私の中では今日が最後。個人的に千秋楽。 さすがに3回目だともうそろそろ書くことなさそう...と思っていたのですが、なんと私の大好きな佐野ペロンが先週後半から交代してしまいました。に、逃げられた...。前回(2月9日)観終わった後に「まだあともう一度佐野さんを観られる~♪」と思っていたのに、呆気なく夢破れました。その交代したペロン大統領は下村さん。いえ、あの、私、下村さんも好きなんですよ!歌えるし、卓越した演技力とあの独特の存在感は他の役者さんが持っていないものですから。個性派俳優さんですよね。なのですが、私は佐野さんが観たかったのですよ...あのノーブルな大統領が。下村さんと佐野さんでは好き好きメーターの針の振れ方が何百倍も違うのですよ。ごめんね、下さん。 というわけで、てれ~ん...と肩の力を抜きつつ、観ました(スミマセン)。 幕開けからがんがん歌う芝ゲバラ、今日も好調でございます。ただ、2階席後方で聴くと、やはり劇場の反響のせいもあってか、マイクを通した歌声がものすごくうそ臭く響きますね。もうちょっと音響がシャープになるといいのだけれど...でも大阪の四季劇場のあの酷さに比べたら天地の差です。そんなに贅沢言ってはいけないかも。で、エバがマガルディに「ブエノスアイレスへ連れて行って!」とせがむ酒場のシーンで、芝ゲバラがカウンターに立ってシェイカーをシャカシャカ振ってカクテルを作っていたりするのがなんだかかわいいです。マガルディが歌い終わった後のマイク台に立っていたりするのも。芝ゲバラ、自分がメインで歌っていたり台詞を言ったりするのではない時にも後ろで小芝居をしていたりして、観察していると面白いです。この、全体がよく見える(舞台の奥行きも左右も含めて)のは、2階席で観る楽しみのひとつ。1階席前方で観ると役者さんの息使いや汗まで感じられるほど近いのは嬉しいのですが、同時に視野が狭くなって全体を見渡すことは出来なくなってしまうんですよね。だから同じ作品でも前方の超良席と2階席後方のリーズナブル席と両方で観るのが理想。全体を見渡せると、神経質なまでにシンメトリーにこだわってステージングされていることも非常によくわかります。 そしてタイトルロール、エバ。うーん...ちえさん、今日はどうも調子が良くなかったみたいです。声がいい感じに伸びていなかったし、今ひとつ力が込め切れていない雰囲気でした。約2ヶ月のロングラン、一人で主役を張って連日歌いっぱなしなので、もうそろそろ喉に疲れが出て来たというところでしょうか。歌う技術は十分に持っているはずのちえさんが、ブレスをするタイミングを失ったのか、一瞬喉が詰まってしまったのか、フレーズが途切れてしまうシーンがありました。この間観た時が一番調子が良かったかなー。 ペロン大統領、下さん。いやー、いやー、いやー......こってり。ですね。いい意味で。それが下さんの持ち味ですしねー。前は下村ペロンでたっぷり満足していたのですが、大好きな佐野ペロンを観てしまった後だと...なんだかちょっと違和感を感じてしまったり(一重に私の好みの問題です)。下さん、いいんですけどー、うまいんですけどー。私は佐野さんが観たかったの...。という私の好みと望みは置いておいて。下さん、やっぱり太りましたねー。でもって老けましたねー。太ったなぁ、あれは紛うことなき中年太りってやつだなぁ、と思ったのは2年前の『エビータ』東京公演でも、1年前の『ライオンキング』名古屋千秋楽週でも感じていたのですが(去年の『異国の丘』名古屋の時には一生懸命若作りされていたから^^;)、今回改めて思ったのです、年輪を重ねられたのだなぁ、と。その分、佐野さんよりもずっと貫禄があってふてぶてしいいやらしさが漂う大統領でした(誉めてます)。とっても腹黒い感じがして。『エリートのゲーム』の椅子取りゲームシーンでも、そういう感じが如実に現れていました。椅子の取り方がなんというのか、決してスマートではないのです(笑) このシーン、佐野さんは精巧に計算された狡猾さを出していたと思うのですが、下さんはまさに手段は選ばず!力づくででも!泥を被ってでも!という感じがむんむんしていて。みっともなさ、醜さを晒してでもわしはその椅子奪ってやるっ!!という感じの這い上がり方でした。その姿がですね、必死であればあるほど、見苦しければ見苦しいほど、コメディに見えて私たち観客の笑いを誘うのですね。滑稽で。そういう客心のつかみ方、くすぐり方は本当に巧いのです、下さんは。でもああいう腹黒さやふてぶてしさのある恰幅のいい男、というのがペロン大統領としては王道なのでしょうね。佐野さんのペロンももちろんありなのですが。そしてそして。下村ペロンとちえエビータの間には、愛情がないと私は見た!(確信) 佐野ペロンとちえエビータの間には確かに男女の愛ってものが存在していたと思うのですが、前者の組合せだともう完璧に野心だけで結びついた二人という感じなのです。お互いを利用し合ったわけですね。だから二人が声を合わせて ♪始めからこれは 恋なんてものじゃないのさ 誰だって 男たちも 女たちも 絡み合って 利用し合って 手を取り合って この世の中を渡ってゆく と歌うフレーズが、シャレになりません(笑) その通りなのですもの。佐野ペロンとちえエビータの時には、ここに少し、実は惹かれ合っているのだけれど、お互いがうそぶいて強がっているような、意地を張り合っているかのような含みがあったと思うのですが、下村ペロンとちえエビータの間にはそれが皆無でした。と言うか、下さん、大統領って言うより...なんか、女王様みたいなんですもの(^^;) それも夜の女王ね(そう言えば昔、青い鳥でやってましたよね、夜の女王・笑)下さんとちえさんだと女王様と王女の競り合いといった方がよっぽど当たっているかのような...もごもご。ヒロインは私よ!みたいな(笑) ともあれ、そんな雰囲気の下村ペロンだったのです。 あ、冒頭の葬儀シーンでもエバを失って悲しみに暮れていると言うよりは、うつろで投げやりなぼんやりした表情をしていましたっけ。佐野ペロンのあの沈痛な表情とは随分違うなぁ...と思いました。ラスト、エバに対して ♪空をゆく~ 美しい憧れよ~ って歌うところも、エバに対して歌っていると言うよりは、「ビバ!あたし!!」って感じで自己陶酔して歌っているような空気がなきにしもあらず...。いえ、そんな下さんも好きですけどね、わたくし。楽しませてもらいました、たっぷり。 あ、あと、最後にどうしてもこれだけは言わせてほしい。ミストレス、相変わらずのヒドさでした。今日はもう本当に苦痛でした、あのソロ・ナンバーを聴いているのが。で、思ったのですが。このシーン、要らなくないですか?いっそのことごっそりこのシーンごと削っちゃえ~!!(鬼です、わたくし。心の中、真っ黒です) なんて思ったのですが。ミストレスが追い出されて、家の中でエバとペロンがいちゃいちゃするところまでにして、暗転にすれば次のシーンにつなげられますし。それくらい、聴くに耐えない歌唱でした。あのソロにバックコーラスをつけなきゃいけない芝さんも気の毒です。ソロで歌っている人よりもバックコーラスの方が明らかに歌が上手いんですもの。美声なんですもの。そう言えばこのナンバー、サラ・ブライトマンのコンサートで彼女が歌うのを聴いたことがあるのですが。当然、サラはもう比類なき美声で聴かせてくれて、このナンバーの良さを存分に味わわせてくれました。そのことを考えても、せっかくのきれいなナンバーを、歌う役者が下手なばっかりに台無しにしてしまうのはあまりではなかろうか...と思ったことでした。サラ並みに歌え、なんて無理難題は言いませんので、"並"程度には歌える人に歌わせてほしいのです。 そうそう、今日はマガルディの渋谷さん、よく声が伸びていました。 シンメトリーのステージングですが。あれを生かすためには、なまじ円形の回り舞台を採用しない方がいいのでは...と、全体を見下ろしていて思いました。新演出にする前の、日生劇場でやった時には円形ではなくて、舞台の長方形をそのまま使っていて、シンメトリーがくっきり浮かび上がるようにライティングもされていて非常に端正だった記憶があるのですが。その方がきっと効果的だと。それとは別に、最近四季は自前のプレハブ劇場ばかりになってしまって味気ないですね。劇場にはやはり劇場としての雰囲気や格がほしいな...という気がします。私は日生劇場、大好きな劇場でした。特に『オペラ座の怪人』は、あそこでやるからこそ音響も、内装の雰囲気も、すべてが融合し合っていい空間が生み出されていたと思うのです。あら、なんだか変な〆になってしまいました...。 Thu Matinee Feb.22 2007 名古屋ミュージカル劇場
by bongsenxanh
| 2007-02-24 00:31
| 観劇レビュ 国内etc.
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Comments(2)
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purely4
at 2007-02-24 12:32
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こんにちは。再びお邪魔します。
佐野ペロンとすれ違いで残念でしたね。 レポを拝見させていただき、佐野ペロンと全く異なる下村ペロンが逆に楽しみになってきました。明日千秋楽を観にいくのですが、「みっともなさ、醜さを晒してでもわしはその椅子奪ってやるっ!!」とか「ビバ!あたし!!」を観劇中思い出しそうです。 ところで、出演予定キャストに佐野マガルディが追加されましたね。明日、佐野マガルディが出演されると嬉しいのですが・・・。 話は変わりますが、佐野ファントムはご覧になられましたか?洞察力のある興味深いレポを書いていらっしゃるので、もし書いてみえるのなら、拝見させてもらえると嬉しいなあと思いまして。
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bongsenxanh at 2007-02-24 21:45
♪purely4さん
こんばんは。 あら、観に行かれる前に読まれましたか...私の下村ペロンの印象が先入観になって観劇時のお邪魔にならないといいのですが。 佐野マガルディは2年前の東京公演の時に観ました。ソロ・ナンバーはあるものの、佐野さんが演るには少しもったいないような気もします、役柄として。出番も少ないですしね。とっても細いマガルディですよ~(笑) 明日、出演されているといいですね。 佐野ファントムは喉から手が出るほど観たかったのですが、去年の8~10月はいろいろあって身動きの取れない時期だったので、結局観に行けず終いでした。大阪でファントムが開幕して、高井&村ファントムが一段落して佐野さんの出番が来たら、その時には必ず観に行くつもりでいます。 千秋楽、楽しんできてくださいね。
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by bongsenxanh
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