コンクールでお会いしましょう―名演に飽きた時代の原点
とても興味深く読んだ。 かのチャイコフスキー・コンクールを始め、ショパン・コンクール、ヴァン・クライバーン・コンクール、そして日本の浜松国際コンクールなどを例に、コンクールとはどういったものか、その目的は?審査はどのように為されるのか?コンテスタントたちは何を目指してコンクールに挑むのか―といったことを紹介しながら、コンクールを通してクラシック音楽とのつきあい方、クラシック音楽をどのように自分の糧としていくのかを語っている。 中村紘子さんは、ご存知の通り、日本を代表する名ピアニスト(先駆者と言ってもいいと思う)であり、クラシック界のオーソリティーでもあるけれど、同時に名文家でもいらっしゃる。 また、クラシックの世界にだけ閉じこもっているのではなく、非常に視野が広く、世界全体を俯瞰する目を持っていらっしゃる方だとも思った。 現代はクラシック音楽も「ただの名演」では駄目で、「プラスアルファ」の演出が求められる時代だ、というくだりで その音楽的素養や知識によって音楽的感動のホンモノニセモノなどといった差別をするのは、時にクラシック音楽ファン独特の「オゴリ」とでもいいましょうか、例の教養主義的な独善となる危険をはらんでいるのではないでしょうか。と書かれていたのには、はっとして、同時に膝を打ちたくなるほど納得した。そうなのだ、クラシック音楽ファンに独特の、妙にスノビッシュな嫌らしさって、まさにこういうことなのだ。ある音楽から受けた音楽的感動には、個々人によってポイントは異なっていても、その感動に優劣など存在しないのだ。中村さんは、本当に本質を見抜いていらっしゃる。だからこそ、あれだけの演奏が出来、日本クラシック界を牽引していけるのだろう。
by bongsenxanh
| 2008-06-08 23:17
| 本
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