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『ブラザー・サン シスター・ムーン』 恩田 陸 著、河出書房新社
ブラザー・サン シスター・ムーン
ブラザー・サン シスター・ムーン

恩田さんの新作書き下ろし。
「『夜のピクニック』から4年、恩田陸の新たな青春小説のスタンダード・ナンバー!」とのこと。

同じ高校を卒業し、東京の大学(明らかに恩田さんの母校のW大)に進んだ3人(女1人、男1人)の物語。

…うん。悪くは、ないんだ。私は、好きだ。嫌いじゃない。
特に2篇目はとても好きだった。
1篇目の、つかみどころのないモラトリアムな東京の大学生活の心象を綴った話も好きだ。
この女の子の気持ちは、とてもよくわかる。
きっと東京で大学生活を送る多くの学生がこんな気持ちを抱えながら4年間を過ごしていることだろう。

ただ、なんだろう。
こう、もやっとしているのは。
恩田さんは書きたいことを書ききらないまま、この本を世に出してしまったのではないかという気がするのだ。
どうにも「未完」の感触があると言うか、中途半端なままで終わっている感じがするのだ。
書き下ろしとのことで、目安になっていた締切を押しに押して、仕方がなく無理矢理原稿を書き上げたのではないかな...と下衆な勘ぐりまでしてしまった。
もっともっと深く掘り下げて、確かな手触りでもっと奥の核心を描きたかったのではないか、と思えて。
なんとももったいないような気がした。
もしかしたらまた何年か経った後で、これに手を加えるか、または別の形で書き直すことがあるかもしれない。
それくらいに、扱ったテーマは良かったと思うのに、もったいなかった作品。
by bongsenxanh | 2009-02-22 02:21 | | Comments(0)


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