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『ジーザス・クライスト=スーパースター ジャポネスク・バージョン』
年度初めの毛が抜けそうな激務の中、金曜の夜、なぜか気がついたら劇場の椅子に座っておりました。
そんなわけでものすごく久し振りの『JCS ジャポネスク』
いつ以来なのかと思ってごそごそと観劇記録を手繰ってみたら、1998年の東京四季劇場[秋]の杮落し以来なのでした。10年以上もの時が経っていたことにかなり驚き。それだけの歳月が流れていたら、キャストが大幅に代替わりしているのは自然のなりゆきで。以下が、そのキャスト。

ジーザス=金田 俊秀 ユダ=金森 勝 マリア=高木 美果
カヤパ=金本 和起 アンナス=吉賀陶馬ワイス シモン=本城 裕二
ペテロ=飯田 達郎 ピラト=青井 緑平 ヘロデ王=星野 光一
司祭=阿川 建一郎 伊藤 潤一郎 佐藤 圭一

もう、キムさんだらけで、メインは韓国の方ばかりですねー。
ま、別にいいのですけど。演じられる実力を持っている人がやればいいだけのことですから。
ただ。どうして日本名をかたらせるのでしょうね?いやらしいな、と思うのです。劇団四季のやり方が。前にもちらちらと書いてきたことなので、ここでは詳しく書きません。

以下、つらつらと印象なぞ。いつものことながらご興味のある方だけどうぞ。



これが初観となった金田ジーザス。ジーザス デビューをしたのは去年でしたっけ?この方、確か『EVITA』の関西公演終わりがけに突如としてチェ・ゲヴァラ デビューをしてコアな四季ファンの度肝を抜いてくれた方ですよね?私は観なかったけれど、随分とイケメンのチェだったという噂を聞きました。歌とか演技がどうだったかまでは知りませんが。
で。私の初印象は。
遠目に観ると、雰囲気や顔つきが祐一郎さんのジーザスに似ているな、と。
そっくり!!というのではなくて、「なんとなく」「おぼろげに」という程度に。
白塗りのジャポネスク・メイクだから、顔の細部はわかりませんしね。
そして、歌。と言うか、声。
この方、声質に恵まれているのですね。第一声を聴いた時に、まずそう思いました。
決してテノールではない、ちょっと低めでコシと太さのある(うどんか?)ハイバリトンくらいの声。
声量もきっとあるのだと思う。四季のマイク音量びんびんの音響調整だと、わかりづらいけれど。
そういうところまで、どこか祐一郎さんに似ているような気がしました。
ただ...なんだろう、雰囲気や面影が似ているからといって、同じような存在感が示せるかと言ったらそれはまた別の問題で。当然のことなのですが。
金田さんは、悲しいくらいに「神の子」ではなくて、「人の子」でした。最初から最後まで。一度たりとも彼が「神の子」らしく見える時がありませんでした。「神の子」たり得る以前に、「人の子」としてでも、強力なリーダーシップを持つ人間のようにも見えなかった。むしろ非常に"煩悩"を多く持つ生々しい人間のように見えました。なんて言うのか、"市井のそこらにいる今時の兄ちゃん"という感じで。まさかそういう"ジーザス像"を敢えて狙った、ということはないでしょうし。この辺りはきっと、これからの金田さんの課題なのだろうと思います。
あとですね、ある一定の声域で歌う時にどうも鼻にひっかけて口先だけで歌う癖があるようで。私はそれがとても気になりました。もっと言ってしまえば、とっても嫌でした。なんだか、受けつけなかったのです。もっとはらから歌え、はらから!と言いたくなってしまったり。漢字で「腹」じゃなくてね、ひらがなで「はら」っていう感じ。腹筋、ないのかしら。
ジーザスの大ソロ、『ゲッセマネ』を歌う時のリズム感が悪いのも気になったなぁ。♪わたしは知りたい、My God!のところですよー。あそこってやや突っ込み気味のシンコペーションで歌うくらいの感じでいいと思うのだけれど、どうももたもたしていたのです、彼の歌い方は。
あと、シャウトする時の「わ―――――!!!」っていう発音が気になった。いろいろ、細かく注文付けて申し訳ないけれど。彼、「アァ―――」でも「ゥア―――」でもなく「わ」って発音するのです。ひらがなの「わ」。シャウトとしてすごく不自然でした。
総じて、私は、金田ジーザスがどうも、苦手だったようです。なんだか、なんだか。
持っている素材はとてもいいと思うのだけれど。その素材をまだどう使っていいのかわかっていないのか。あるいは単純にトレーニングや経験が不足しているだけのことなのか。
賛否両論あったけれど、私はまだ、柳瀬ジーザスの方が良かった気がします。いや、祐一郎さんを凌ぐジーザスなんてこの先決して出て来ようがないのですけどね。言わずもがな。
そうそう、最後の磔シーンで布一枚になりますよね。あそこで、この方は長身でかつ痩せていらっしゃるので、ジーザスらしく見えるのですが。私は下腹部の辺りに肉がうっすら乗っていて、存外ぷよっとしているのを発見してしまいました(意地悪?)。あぁ、やっぱり腹筋ないのかもなぁ...と、とても容赦ないことを思ってしまいました。はらですよ、はら。キーワードは「はら」!
あぁ、あと、「この、乾き...この、乾き......神よ、父なる神よ!」の台詞の言い方も少し拙さを感じてしまいました。すみません、点が辛くて。

ジーザスだけでかなり長くなってしまいましたが(だって、「ジーザス・クライスト=スーパースター」ですものね)、金森ユダ。
と言うか金森さんは私にとっては「金森さん」ではなく「キム・スンラさん」なのですが。その名前で慣れてしまっていたので。途中で改名する必要なんてあったのかなぁ、ぶつぶつ。
前の関西公演で芝ユダからキムユダに交代した時にちょうど観た友人が「凄いよー、ジーザスのこと好き好きなユダだったよー」と言っていたのですが、それが今回よ~くわかりました。確かにジーザスのこと好き好きなユダだ。
キム・スンラさんて声のトーンが高いんですよね、男声にしては。で、ソフト。だから、私には少し違和感がありました。ユダとしては。
ユダって、私のイメージでは芝ユダなのですよ。芝さんのユダは、ジーザスのことを愛しつつも、決してそれは女性的な愛とかではなくて、がっちりこってり男!な感じなのです。それはそれはたっぷり「ますらをぶり」がぷんぷんと濃厚に漂うユダなのですよ。で、ばんばんがんがん歌えるユダ。声が太くて、しっかり伸びて、有り余るほどの声量がある。
それに慣れてしまっていた私にはどうしてもキムユダは違和感があった、と。
これはキムユダが悪いということではなく。個人が役に抱くイメージの問題。
キムユダみたいなユダも、まぁ、ありなのだと思います。役に精魂注ぎ込まれていたし。
それにしてもジーザスが捕縛された時にキムユダがする熱い抱擁とねっとりしたキスは......どこからどう見てもセクシャルで、つまりはゲイのそれなのですよね。いやー、あのシーンのあのキスがあんなにもいやらしく見えたのはキムユダが初めてだなぁ。芝ユダの時にはそんなこと全然考えもしなかったものなぁ。
ただ、キムユダの歌う『スーパースター』は、やはり少し声質に合っていなくて、芝ユダが懐かしくなってしまいました。こういうビートに乗ってがつがつ歌っていく歌はスンラさんにはフィットしないのかも。
あと、まったく別物だけれど、Drewの歌うこのナンバーを思い出してもみたり。いや、Drewのあれはね...日本人には無理だものね。生まれ持ったDNAが違うし。それにあんなにお洒落で小粋なユダっていうのも、あれはあれでちょっと反則技かもしれないですし。

えーと、それからマリアの高木さんですね。なんか、スルーして通りたいような気もしますが。この人、どうしてマリアを演ってらっしゃるんでしょ?歌もうまくないし、キャラクターとしてもマリアではないです。
歌がうまくないと言うのは。地声で歌うのに慣れていないソプラノさん、という意味で。声が非常に不安定なのです。揺れる揺れる。そしてヴィヴラートかかり過ぎ。
そしてマリアはね、「マグダラの」マリアであって。『サウンド・オブ・ミュージック』のマリアでもなければ、『ウエスト・サイド』のマリアでもないのですよ。つまり清純派なんかではない、ということで。
♪今~まで~ 知り尽く~した 男と~ 同じなのに~ 
とか歌われても全然説得力がないのです。
もっと酸いも甘いもくぐりぬけて来たようなしたたかさと、その上で開いた悟りとか包容力みたいなものがないとマグダラのマリアにはなれないんじゃないかなぁ。
私、この人が演じるクリスティーヌも、観たくないと思いました。
だって、想像ついてしまうもの、どんなか。

アンサンブルについては...どうも、エネルギーと言うかパワーが足りていない気がしました。抑圧され、その反動からジーザスを担ぎ出し、崇め、そして貶める民衆の、そのうねりや爆発がいまひとつ、不足していたかな、と。
抑圧が大きければ大きいほど、それを跳ね返そうとする反動の力は強くなるはず。
そこのところが、舞台から客席まで届かなかったような気がしました。
小さな村一揆程度で終わってしまっていたような。
昔と比べてしまうこと自体、もう私が年を取ってしまったということなのかもしれないけれど、それでも敢えて言うと、以前はもっとアンサンブルが凄かったと思うのです。
アンサンブルをぐっと引っ張っていくヴェテランさんが何人もいて、吸引力があったし、結束力も強かった。ユダと一緒に歌うソウル・ガールのコーラスもレベルが高かったし。この作品はある意味、アンサンブル=民衆が主役とも言えるので、もっと頑張ってほしいです。
カヤパがすけきよみたいになってたとか、ヘロデ王に個性と華が足りなかったとか(下村さん、カムバーック!!)、他にも言いたいことがあるような気がしますが、ひとまずこの辺りで。

最後にこれは余談ですが。
上演中に、すごくシリアスなシーンなのに、なぜか頭に『聖☆おにいさん』のイエスの顔が浮かんじゃったり、「父が望まれたので...」のくだりがフラッシュバックされちゃったりした私は、ちょっとどこかおかしいのでしょうか。
神よ...罪深き私めをお許しください。アーメン。

Fri April17, 2009 新名古屋ミュージカル劇場
by bongsenxanh | 2009-04-19 00:59 | 観劇レビュ 国内etc. | Comments(9)
Commented by ともきち at 2009-04-19 08:55 x
楽しく観劇のお話読ませていただいて。
ラストでラストで!!!大爆笑!!!!
いやあ・・朝からいいもの読ませていただきましたっ!
Commented by tomokot2 at 2009-04-19 16:27
ご無沙汰しておりました。(あ、でもロムらせていただいております)JCSブログのペルシャ猫です♪
私はジャポは前回、間違えて(爆)2回も観てしまったので、今回東京公演ではスルーしてエルサレムだけ見て参りました。
おっしゃるとおり、どの方が日本人なのかを「当てる」ほうが難しいようです。どうしても台詞部分での発音が、ん?という部分あるんですが、そういうもんだから、と慣らされてしまいそうです。

>なぜか頭に『聖☆おにいさん』のイエス
私も最早、四季版は真面目に見ることは出来なくなっております(爆)
感動しましたという感想を持つ方もいらっしゃるので、かろうじて集客もありJCSという作品が日本で上演されているようですが。もうそろそろ・・・。
四季のジーザスは山口さんで完結しており、役者が変わったら同じ演出では無理じゃないかな~と感じております。
私はこの作品が好きなので、日本で唯一のジーザスについては最低限の愛情をもって見守りたいですが、正直、立川にいる日本のイエスから目が離せない感じです。。。
Commented by bongsenxanh at 2009-04-20 01:15
♪ともきちさん

いえいえ、こんな長いの読んでくださってどうもありがとうございます^^
いやーいやーいやー、大爆笑してくださって光栄なのですが。
よりにもよって、私、ラストの磔シーンで、劇場中が水を打ったようにし―――ん...としている中で、ふとこの後に起こるジーザスの復活の奇跡ことが頭をよぎって、それで連鎖的に「父がそう望まれたので...」が出て来ちゃったんですよー。最悪でした(^^;) あんなにも厳かでシリアスなシーンなのに。
あの漫画って本当に罪ですよー!
Commented by bongsenxanh at 2009-04-20 01:24
♪tomokot2さん

こんばんはー、こちらこそご無沙汰しております。私の方もちらちらっとブログは読ませて頂いていましたよー。あー、ペ猫さんは柳瀬ジーよりも金田ジーの方がお好みなのねー、とか(笑) 興味深く読ませて頂いておりました。
四季の現在のアジア圏外国人出稼ぎ状態は凄まじいものがありますね。角界と似ているような。それだけの実力のある人が集まってくるのなら何も文句はありませんが、でも日本名名乗らせるってのはどうなの・・・?と。あと、日本人の人材不足が大きいのでしょうね。
Commented by bongsenxanh at 2009-04-20 01:25
つづき。

そうそう、今回の金田ジーザスでの公演が初見になって、ここが入口になる方たちもいらっしゃるでしょうから、それはそれでいいことなのでしょうね。JCSという作品の裾野を広げる意味では。
私は余計なものを削ぎ落として様式美を追求した四季のJCSはむしろエルサレム・バージョンより好みなのですけどね。キリスト教文化のバックグラウンドがない国ではこれくらいの方が合っているのかな、と感じたり。
祐一郎さんのようなカリスマ性とオーラのあるジーザスはもう二度と出て来ないでしょうねー。
立川のイエスは、えぇ、私も気になって気になって仕方がないです。今後、いったいどんな奇跡をやらかしてくれるのか(笑)

あ、そう言えば、去年ブルックリンでやったJCSのプロダクション、私の友人も出ていたんですよー。ソウル・ガールを演じたそうです。
Commented by kaz at 2009-04-23 21:57 x
はじめまして。名古屋の40代初頭♂の音楽ファンです。

私は4月18日の夜の部を見ました。JCSはCD(10種類近く手元にあります)やビデオでは20年以上のお付き合いがありましたが、生は今回が初めてでした。

このジャポネスク版は以前から気になってはいましたが、やはり一番残念に思ったのは、演奏がカラオケであることです。特に本作はロックと純邦楽の融合というアイディアがユニークだけに、尚更です。

以前に同じ名古屋で「エビータ」(私の大学時代の想い出の作品で、これがきっかけでALWのファンになりました)を見た時に、そのカラオケの音の悪さにガッカリしたことがありましたから、今回は安いB席を取りました。新名古屋ミュージカル劇場では、演劇自体はこの席でも充分に楽しめました。

では、これからもよろしくお願いします。
Commented by bongsenxanh at 2009-04-25 00:17
>kazさま

こんばんは。はじめまして。

演奏がカラオケは確かに残念なことですね。
名古屋もそうですが、大阪の劇場や東京の劇場でも、四季の公演ではカラオケを使うことがよくあります。
それだけに尚更、カラオケの音質にはこだわってほしいところですね。
ただ、生オケだからと言って音がいいかと言うと、そもそも生オケの演奏レヴェルが低くて...ということもあり得ますので、生オケもカラオケも一概には語れないところです。

新名古屋ミュージカル劇場は2階席がとても見やすくてコストパフォーマンスが高いので、私の定位置はC席です。あんなに舞台が近くて見やすいC席は他の劇場にはありません。

JCSとのお付き合いが20年以上でしたら、もっとずっと以前の四季のジーザスがご覧になる機会があったらまた印象が違ったかもしれませんね。
現在のジーザスとはオーラやカリスマ性がかなり異なりますし、アンサンブルの躍動感やエネルギーの熱さも随分違ったような気がします。
Commented by moonlight124 at 2009-04-27 23:30
こんばんは~。ご多忙中、お邪魔します。
同じく費用対効果バツグンの席で観ました(笑)。
あそこだと、怒りは起こらないのです(笑)。
But,マリアは許容範囲外。音楽の授業の歌のテストかと思った(爆)。
私は芝さんは知らないのですが、『しっかり伸びて』に憧れました(笑)。
そして、すべての出演者が『ばんばんがんがん歌える』のを夢想しました(笑)。
抱擁とキスはそんなにねっとりしてました?
前に見たのが昔すぎてユダ比ができないのですが.....
最近、ゲイテイストが濃厚(押し付けがましいともいう)劇(〇文オペラ)を
観た後で、あれくらいなんのそのでした(笑)。
結論:昔は良かった.....でした。
Commented by bongsenxanh at 2009-04-29 00:44
♪moonlightさん

確かにあの定番席で観ると、どんなにハズレでも「まぁ、よしとしよう」というホトケ様のようなおおらかな気持ちになれますね。作品はジーザスですが。
それにしてもマリアは本当にひどかったですねー。
今までに観た中で一番ひどかった気がします。何なんでしょうね、あれは。
彼女の何が良くてあの役に抜擢しているのかさっぱりわかりませんでした。
抱擁とキスはですね、きっと前の芝ユダが男らし過ぎたのです(笑)
だからそこからの比で考えると、どうしても、えぇ...非常に粘り気のあるものだったな、と。私は感じ取ったのであります。
昔は良かった...のはもちろんですが。私としては持っている素材は悪くないのだから、原石の金田ジーザスはもっともっと本腰入れて磨いていってほしいな、と。未来に向って。べろりんと一皮剥けて化けてほしいのです。
そのためには「はら」なのですよ、「はら!」(まだ言うか・笑)


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